こんにちは!映画好き絵描きのタクです。今回取り上げる映画は『エイリアン4』(現代Alien: Resurrection)1998年公開作です。
監督は『デリカテッセン』『アメリ』に代表されるジャン=ピエール・ジュネ監督。彼が作り上げたエイリアン続編ですから、この映画、癖あります。そんなシリーズ4作目の『エイリアン4』を過去作との違いも見比べながらネタバレレビューします。
(ちなみにシリーズ続編最新作『エイリアン ロムルス』はこの『エイリアン4』の後の話ではなく、一作目『エイリアン』と『エイリアン2』の間のエピソードとなっています)
『エイリアン4』解説
監督はフランス人のジャン=ピエール・ジュネです。『デリカテッセン』や『アメリ』の監督です。
主演はシリーズ過去作から変わらず続投のシガニー・ウィーバー。
そして重要なあっと驚く役回りをウィノナ・ライダーが演じています。ウィノナ・ライダーは『シザーハンズ』『キルトに綴る愛』などに出演しています。
原題の「Resurrection」は「復活」「蘇生」の意味がありますから、『エイリアン3』で終わったかに見えた「エイリアンドラマ」の復活を意味しています。
プロデューサー陣には、主人公のリプリーを演じてきたシガニー・ウィーバーの名前も見受けられるので、シガニー・ウィーバーのエイリアンシリーズへの強い思いを感じます。
『エイリアン4』予告編
ネタバレ閲覧注意〜『エイリアン4』あらすじ
『エイリアン4』のあらすじを、以下、かいつまんで書きます。ネタバレ含みますので、映画を見たい方はスルーしてくださいね。
+ + +
『エイリアン4』は『エイリアン3』から200年後。軍の宇宙船「オーリガ」が舞台です。
軍は、『エイリアン3』の舞台となった宇宙刑務所に残されていたリプリーのDNAをもとにクローンリプリー(シガニー・ウィーバー)を誕生させます。
目的は、クローンリプリーを母体にエイリアンを培養増殖させることです。
結果、クローンリプリーはエイリアンのDNAをも併せ持った強靭なパワーを持って成長していました。
そんな宇宙船オーリガに一隻の密輸船が寄港します。
船長以下乗組員は一癖も二癖もありそうなメンツです。
彼らは軍の宇宙船を司るベレス将軍に、エイリアンの寄生体として冷凍睡眠中の複数の人間を売り渡したのでした。
一方DNA操作で誕生したエイリアンたちは、研究施設から逃亡。
宇宙船オーリガはそのエイリアンたちによって蹂躙されます。
クローンリプリーは密輸船クルーと共に、宇宙船オーリガから脱出をはかります。
エイリアンたちとの戦いを繰り返し、密輸船へと向かうクローンリプリーとクルーたちですが、しかし、執拗なエイリアンの追撃に一人また一人と餌食になっていきます。
クライマックスは、新たなエイリアン・クイーンから誕生した新種エイリアン=「ニューボーン」とクローンリプリーとの確執です。
ニューボーンには、なんとリプリーの血が流れており、人間とエイリアンの融合体のようなクリーチャーとなっていた…。
というあらすじです。
クライマックスでは、今までのエイリアンシリーズとは全く異質な、「リプリーとニューボーンの対峙」が描かれます。
『エイリアン4』クライマックス・完全ネタバレ〜
ここからはクライマックス解説です。『エイリアン4』を見る方は、スルーしてください。
+ + +
クライマックスは宇宙船内でのリプリーとニューボーンの一対一のドラマとなります。
そのドラマをあえて「戦い」と書かずに「対峙」と書いたところに、過去作との大きな違いがあります。
リプリーはニューボーンを機外へと排除しようとします。
ですが、そのシーンはあたかも「母と子の別れ」を思わせるかのような節さえあります。
過去作のクライマックスは、ほぼエイリアンがパーフェクトな敵でしたが『エイリアン4』はリプリーとニューボーン血のつながりを匂わせて終わるのです。
『エイリアン4』結末ラストは?こちらも閲覧要注意!
と、過去シリーズとは、一味も二味も違う『エイリアン4』です。
もちろんラストも今まで登場しなかったある「場」で締め括られます。
それでは結末もネタバレしちゃいましょう。「絶対見るから教えないで!」という方はもちろんここでレビューから離脱してください。
今までのエイリアンシリーズに登場しなかった「場」とは、、、
地球です。
クローンリプリーとコールは、地球に帰還して終わるのです。
エイリアンシリーズ3作めまで、ドラマの舞台は常に、真っ暗な宇宙空間と晴れ間のない惑星でした。
『エイリアン4』のラストは美しい地球の大気と光を感じて終わります。
ぼくは公開当時、映画館でこのラストに触れ、
「闇から光へ….と言うことは、エイリアンシリーズはこの4作目でピリオドだな」
と感じたことを今も覚えています。
(でも、その後エイリアンシリーズは『プロメテウス』『エイリアン・コヴェナント』と続くことになったのですけど…)
『エイリアン4』感想・考察レビュー
『エイリアン4』世界観はどう進化しているのか?
エイリアンシリーズの世界観を過去作に振り返ってみましょう。
振り返りの前に、
1作目『エイリアン』は、謎の惑星と宇宙貨物船が舞台。SF映画というより、ほとんどホラー映画。
2作目『エイリアン2』は、植民地舞台に宇宙海兵隊がドンパチする、バリバリ戦争映画。
3作目『エイリアン3』は、武器がない刑務所惑星で知恵だけで立ち向かう、対話が多くドラマ色強し。
そして本作4作目『エイリアン4』は、フランスのコミック「バンド・デシネ」を思わせるフレンチスタイルを感じました。
『エイリアン4』はフランス人監督によるフレンチ『エイリアン』
『エイリアン』シリーズ4作の監督の出身国は?
『エイリアン4』の監督はフランス人のジャン=ピエール・ジュネです。
過去作品の監督を国籍別でラインナップしてみましょう。
『エイリアン』リドリー・スコット監督/イギリス人
『エイリアン2』ジェームズ・キャメロン監督/アメリカ人
『エイリアン3』デヴィッド・フィンチャー監督/アメリカ人
『エイリアン4』ジャン=ピエール・ジュネ監督/フランス人
となります。
監督の出身国で変わる演出色
映画って、監督の国籍で不思議と空気感が変わってきますよね。
ロックミュージックにしてもアメリカンロックとブリティッシュロックでは明らかに違います。
フランス人のジャン=ピエール・ジュネ監督が描き出した『エイリアン4』を観て、改めて映像の世界も音楽の世界と同じように、クリエイターの出身国で変わるものだなあ、、、と感じました。
そりゃそうですよね、人間って、生まれた時からそれぞれが所属する文化圏の中で育っているんですから。
そんな流れでぼくは、「日本人監督がエイリアンを撮ったら、どんな作品になるんだろう???」とも思いましたよ。
それほど、『エイリアン4』は、過去3作品とは違った色彩を放っていました。
では、「その色彩ってどんな色?」となりますよね?
ぼくの答えは「フランスやベルギーのコミック「バンド・デシネ」の匂い」です。
『エイリアン4』はバンド・デシネだ
『エイリアン4』のどこがバンド・デシネなの?と聞かれてもズバリ即答はできないんですが、ぼくがパッと思い浮かんだのは、やっぱりバンド・デシネ。(バンド・デシネ=詳しくはウィキペディアとCINRAに分かりやすく説明されていますので、そちらをどうぞ)
日本で比較的知られているバンド・デシネ漫画家には「メビウス」がいますね。
『アキラ』を描いた大友克洋もメビウスの影響を受けていると言われています。
おっと話がそれつつあります。話を戻します。
監督はフランス人ですから当然バンド・デシネで育っているはずです。
なので『エイリアン4』の作品トーンが、ぼくにバンド・デシネを思い起こさせたのも、至極当たり前だよな、、、とも思いました。
それと、アクションシーンにしても、ふっとフランス人監督リュック・ベッソン(名作『レオン』の監督です)を思い出すところもありました。(『レオン』は別記事で取り上げています)
映画にはやっぱり国民性みたいなものがあるように思えます。
ぼくは『エイリアン4』のフレンチなバンド・デシネトーンが好きです。
『エイリアン4』脇役の貨物船クルーがいい味出しています
エイリアンシリーズでは、主役のリプリーとともにエイリアンと戦うメンバーが登場します。
『エイリアン』では、貨物船ノストロモ号の乗組員=普通の船員
『エイリアン2』では宇宙海兵隊
『エイリアン3』では監獄惑星の囚人たち
そして『エイリアン4』では、宇宙貨物船ベティ号のクルーです。
宇宙貨物船といっても一作目『エイリアン』のノストロモとは違い、かなりヤバい橋を渡っている密輸船です。
当然クルーもかなりヤバめ。
そんなクルーたちは一癖も二癖もあるキャラクターとして描かれていますが、彼らのキャラが立ちかたがヨイのです。脚本、うまいです。
ぶっちゃけていうと、普段その辺にいたら避けて通るようなメンツですけど、映画観ていると、そんな彼らに肩入れしてしまうんですね。キャラ付けが見事ってことです。
クライマックスでのエイリアン追撃振り切りつつの脱出行は、カメラワーク含めて含めて見ものです。
『エイリアン4』アクションシーンのカメラが新鮮です
エイリアンシリーズで、リプリーや仲間達とエイリアンの戦いが見せ場になっています。
でも、これまでのエイリアンシリーズと『エイリアン4』はアクションシーンの見せ方が根本的に違うよな、と感じています。
ベティ号クルーの一人に「ガン使いの名手」が登場します。『タクシードライバー』のロバート・デ・ニーロのガン捌き名シーンへのオマージュが感じられたり、跳弾を利用して敵を倒したり。
ベティ号クルーらがハシゴを使って逃げるシーンで、下から追撃するエイリアンを迎え撃つシーンでは、ハシゴから逆さまにひっくり返ってガンを下に向かってぶっ放したり…
カメラアングルもこれまた絶妙で、「正面カメラ構図」を大胆に使い倒しています。
…と、アクション好きにはたまらない垂涎シーンがあっちこっちに仕込まれています。
フルCGエイリアン初登場
また、フルCGによるエイリアンが登場したのも『エイリアン4』が初めてなのです。
今や当たり前のCGですが、1998年当時はCGの可能性が探られている変遷期だったと思います。
水中を動物魚雷のように進むエイリアンはCG作成ですが、これまでのエイリアンに感じたゾクリとは別の意味でザワっとしますよ。(一瞬だけど)
『エイリアン4』かわいそうなほどかわいい?ニューボーンのこと
新種エイリアン・ネーミングは「ニューボーン」
『エイリアン4』で他のシリーズ作品と一線画しているのが、あらすじでも書きましたが、新たなエイリアン・クイーンから誕生した新種エイリアン=「ニューボーン」の登場です。
そのデザイン造形には、のけぞりました。
「ニューボーン」の容貌は、人間とエイリアンの混合体といった奇々怪界デザインなのです。
「ニューボーン」はクローンリプリーのDNAが絡んでいるゆえのそんな造形なのです。
気持ち悪いことは誰もがうなずくと思いますが、その「ニューボーン」、どこか赤ん坊のような可愛らしささえ感じてしまうデザインがなされているのです。
「ニューボーン」とリプリーの母性
ここからはネタバレ含む結末にも触れますので、観たい方はスルーしてください。
「ニューボーン」はそんなDNAを持っているからでしょう。リプリーを母親と思って接しているとしか思えない表情や仕草をします。
そのシーンは「気持ち悪さ」を通り越した「今までどんな映画でも観たことがない、奇妙な愛情表現」と、ぼくは感じました。
さらにストーリーは、リプリーがそんなニューボーンを排除抹殺する流れとなります。
そのラストシーンは、こう↓です。
「リプリーが敢えて宇宙船に小さな穴を開け。その空いた小さな穴からニューボーンが宇宙空間に吸い出されていく、、、」という、映像的になかなかグロい排除シーンです。
しかし、そのニューボーンを排除するシーン==リプリーとニューボーンの表情が醸し出す空気は、「理不尽な理由により引き裂かれた母親と子供」の悲劇的な匂いなのです。
『エイリアン4』はゴシックホラーだ
『エイリアン4』は、人によって作り出された「異形」が、人によって排除されるという、実に「フランケンシュタイン的物語」でもあると感じています。
ヨーロピアンゴシックホラーの「フランケンシュタイン」が、ヨーロッパ人監督によって新たな物語として換骨奪胎されたのが『エイリアン4』だ…と思ってしまうのは、考えすぎでしょうか?
人とエイリアンの対決に「切なさ」を感じさせる作品は、過去無かったです。
それだけに、「クローンリプリー=母親」と「ニューボーン=子」の悲哀が、これまでのエイリアンシリーズとは一線を画した物語だ、と感じました。
まあ、とはいっても、エイリアンシリーズは人気シリーズです。
「エイリアン造形はかくあらねばならない!」と考えるファンも多いはずで、「ニューボーン」登場は多分賛否両論なのでは?と思います。
しかしぼくは、新路線を切り拓いた制作陣のチャレンジに、賛成喝采派です。
『エイリアン4』でもアンドロイドは登場する?
エイリアンシリーズにアンドロイドの存在は不可欠といっても良い存在です。
『エイリアン』『エイリアン2』『エイリアン3』と、それぞれ違った性格のアンドロイドが登場してストーリーを支えています。
もちろん『エイリアン4』でも、アンドロイドはシリーズ1〜3のアンドロイドとはまた違ったキャラクターで登場します。
(以下、またまたネタバレになりますので、観たい方はスルーしてくださいね。観るけど知りたい!という皆さんは以下こっそりご覧ください)
『エイリアン4』では、アンドロイドは女性です。それも人間よりむしろ人間味のある存在としての登場です。
ウィノナ・ライダーがそのアンドロイド「コール」を演じていますが、クローンリプリーとコールの間には共通点があります。
その共通点とは、「自分は誰?」という自己アイデンティティへの渇望です。
クローンリプリーもウィノナ・ライダー演じるアンドロイド「コール」も、「自分って一体何者?」という問いを抱えた存在として常に苦悶しています。
そう、『エイリアン4』はとことんアイデンティティを問う映画でもあるのです。
SFアクションの皮を被りつつ、深い映画だ、、、とぼくは思います。
『エイリアン4』ぼくの評価は星四つ
『エイリアン4』の最も注目すべきところは、クローンリプリーの「自分自身は何者なのか?」というアイデンティティへの問いが描かれた点にあると思います。
クローンリプリーの「気がついたら生を受けていた」という点は、観客の僕らだって一緒です。しかし、クローンリプリーには人間とは違う戸惑いがあります。
ネタバレになりますが、培養液の中にホルマリン漬けになっているクローン失敗作のリプリーたちのシーンは、過去のエイリアンシリーズの一線を越えた場面だ、と、ぼくは感じました。
気持ち悪いシーンであるけど、悲しみと怒りがまぜこぜになったクローンリプリーの表情=存在が強烈でした。
一人の人間の誕生も奇跡的なことだとよく言われます。ぼくにはクローン失敗作が見せつけられるシーンは、生命誕生への畏怖を忘れてはいけない、、、というメッセージに見えてしまいました。制作陣が果たしてそんなことを考えていたかどうかは分かりません。ただ単にぼくの思い過ごしかもしれないけど…。
でも、でも、「自分自身は何者なのか?」というアイデンティティの問いが描かれていたのは、数あるエイリアンシリーズの中でも特筆すべき点だと思います。
これって監督がフランス人であることにも関係しているような気がしました。(フランス人って、「自分は何者なのか」をとても大切に考える国民性があるように、ぼくは思う)
と言うことで、ぼくの評価は星四つです。
『エイリアン4』キャスト紹介
リプリー:シガニー・ウィーバー/アナリー・コール: ウィノナ・ライダー ロナルド・ジョナー/ロン・パールマン ドム・ブリース/ドミニク・ピノン フランク・エルジン/マイケル・ウィンコット ゲーリー・クリスティー/ゲイリー・ドゥーダン サヴラ・ヒラード/ム・フラワーズ マーティン・ベレス将軍/ダン・ヘダヤ メイソン・レン/J・E・フリーマン ジョナサン・ゲディマン/ブラッド・ドゥーリフ 他
『エイリアン4』配信先は?
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