こんにちは!映画好き絵描きのタクです。今回レビューするのは戦争映画『メンフィス・ベル』。1990年公開のアメリカ映画です。
戦争映画と言っても多種多様です。『プライベートライアン』、『ブラックホークダウン』といった陸戦系。『Uボート』や『ミッドウェイ』といった海軍系。『トップガン』や『永遠のゼロ』といった空軍ドッグファイト系がありますよね。
『メンフィスベル』は空軍系ですが、「一機の爆撃機内のドラマを描いている」点で、数あるドッグファイト映画とは一線を画している映画です。
「狭い爆撃機内にようこそ。爆撃機搭乗員はどんな気持ちで空を飛んでいたのかを体験してもらいましょう。」
そんなアナウンスが合いそうな映画です。ダニーボーイの旋律響く爆撃機クルーのリアルを描いた『メンフィスベル』をレビューしてみます。
『メンフィス・ベル』予告編
『メンフィス・ベル』実話映画の解説
『メンフィス・ベル』は実話です。
舞台は第二次世界大戦のヨーロッパ戦線。英国には、ドイツに対し昼間爆撃を行うという激務を重ねるアメリカ第8空軍が駐留していました。
そして25回の爆撃行から生還した機の搭乗員は、本国に帰国できることになっていました。
この映画は実際にドイツ・ブレーメンへの爆撃から帰還した長距離爆撃機B-17「メンフィスベル」号の25回目の爆撃行をドラマ化した映画です。
大戦当時、アメリカ軍爆撃機によるドイツ国内への昼間爆撃は、「非常に損害が大きかったといいます。
昼は敵戦闘機から丸見えとなりますから、たとえ機関銃を複数備えた爆撃機といえども、被害の数は相当なものだったようです。
爆撃機搭乗員が10代から20代だったことも事実です。
イギリス空軍がドイツに対してとった作戦は「夜間爆撃」だったのですが、アメリカ軍は昼間の爆撃を行いました。
それは夜間爆撃は照準精度が落ち、民間人が住むエリアも爆撃してしまうから、、、と、これはアメリカ国内世論向けの理由もあったようです。
(大戦末期になると、アメリカは夜間爆撃に切り替えます。ご存じのとおり、日本は夜間無差別爆撃にさらされました)
『メンフィス・ベル』スタッフ・配役キャスト
スタッフ……製作:デビッド・パットナム キャサリン・ワイラー 監督:マイケル・ケイトン・ジョーンズ 脚本:モンテ・メリック 撮影:デビッド・ワトキン 音楽:ジョージ・フェントン
配役キャスト……..ウィキペディアに登場人物のキャラクター付きで紹介されていましたので、以下、ウィキペディアより転載(一部加筆)します。
デニス/演 – マシュー・モディーン :操縦士。搭乗員のリーダー。飛行機の名前はガールフレンドの名にちなんだもの。真面目な性格。
ルーク/演 – テイト・ドノヴァン :副操縦士。陽気な性格。プールの監視員の仕事をしたことがある。
フィル/演 – D・B・スウィーニー:航法士。情緒不安定。生意気で協調性があまりない。
ヴァル/演 – ビリー・ゼイン:爆撃手。元医大生。
ダニー/演 – エリック・ストルツ : 無線士。アイルランド系。成績優秀、卒業生総代だった。
ラスカル/演 – ショーン・アスティン:旋回銃座。ラスカルはあだ名であり名前はリチャード。19歳。身長162cm。体重54kg。女性にモテる(ただし自称)。
クレイ/演 – ハリー・コニック・ジュニア :後尾銃座。農家の息子。父親が博打で破産した。
バージ/演 – リード・ダイアモンド:機関士兼上部銃座。あだ名はバーグ。6人兄弟の末っ子。入隊前はファミリーレストランの従業員。
ユージーン/演 – コートニー・ゲインズ :側面銃座。宗教的な若者。クリーブランド出身。19歳。神経質でいつも病気や怪我をしている。なぜ、メンバーに入れたのか謎に思われている。
ジャック/演 – ニール・ジントリ :側面銃座。シカゴ出身。乱暴者。少年時代は少年院を渡り歩いた。
クレイグ・ハリマン/演 – デヴィッド・ストラザーン: 大佐。中間管理職のような立場の悪さに辟易している。
ブルース・デリンジャー/演 – ジョン・リスゴー:中佐。悪い人間ではないが少々、皮肉屋。
『メンフィス・ベル』あらすじ紹介
以下があらすじです。
時は1943年、英国内にあるアメリカ第8空軍基地。
基地に一機の爆撃機B17が駐機している。搭乗員は十代から二十代初め。年端もいかない若者たちだ。少年と言ってもいい搭乗員さえいる。
そんなメンフィス・ベルの乗員に25回目の出撃命令が下る。爆撃目標はドイツのブレーメン。工場爆撃が任務だ。
第8空軍には、「25回目の任務を終えることができれば、本国に帰還できる」そんな決まりがあった。
出撃を前に、ひたすら酒に酔うもの、泣くもの、祈るもの、、、。それぞれがそれぞれの時間を過ごす。
メンフィス・ベルの帰投は、第8空軍史上初の25回任務達成という点で大きなな意味を持っていた。
そんな経緯で基地に一人の中佐がやってくる。
広報担当軍人ブルース・デリンジャー中佐だ。
メンフィス・ベル帰投の暁には、その戦功を戦時公債広報に使うためだ。
そんなことはどうでも良い搭乗員は、ブレーメンを目指し離陸する。
ドイツ上空に到達したメンフィスベルと搭乗員を待ち受けるのは、ドイツ軍迎撃戦闘機の迎撃と激しい高射砲の洗礼だ。
次々と墜ちていく友軍機。
激しい対空砲を掻い潜り、工場爆撃に成功する。
任務は終了。しかし送り狼のドイツ軍戦闘機がB17編隊に執拗に喰らいつく。
その迎撃で機は被弾し、無線士のダニー・デイリーは重傷を負う。
果たしてメンフィスベルは25回目の爆撃行から帰還することができるのか?
というストーリーです。
『メンフィス・ベル』あらすじ〜結末ラストまで〜ネタバレあり
以下ネタバレです。映画を観たい方はスルーしてください。
ダニーを救うべく、医大生だった爆撃手のヴァルが手を尽くすが、機内の救護キットでは手に負えない重傷だ。一刻も早い基地での手当が必要だ。
しかし、メンフィスベルの被弾箇所はエンジンだった。
四つあるエンジンのうち、ひとつ、ふたつと被弾で止まってゆく。
そんなボロボロのメンフィスベルの機体を、機長のデニスが必死に操る。
遠くに基地が見えた。車輪を下ろす。
しかし、片方の車輪が出ない。電気系統が被弾で断ち切られていたのだ。
そのまま片輪で胴体着陸しては、地面と擦れる翼内のガソリンタンク爆発が必至だ。過去、同じ状況で爆発し死んでいった仲間たちを彼らは見ているのだ。
「なんとしても生きて帰る」
搭乗員たちが、車輪を出す手動降下レバーに取り付いて。必死に回す。手動レバーの真下は、開いたままの爆弾投下扉だ。足を滑らせれば間違いなく機外に放り出される。
それでも、皆、回す。
着陸の寸前、ギリギリで車輪がセット固定され、メンフィスベルは無事、滑走路に滑り込んだ。
機体に駆け寄る基地救護車、そして整備兵や広報担当のブルース・デリンジャー中佐。
デリンジャー中佐が叫ぶ。
「写真を撮るぞ!皆、ここに並ぶんだ!」
しかし、機長のデニスはそんなデリンジャー中佐の声を無視し、シャンパンの栓を抜く。
搭乗員たちに降りかかるシャンパンシャワー。
25回の出撃から生きて帰ったことだけが、搭乗員にとってはかけがえのないことだった。
カメラは、高所からボロボロのメンフィスベルと喜びにわく兵士たちを捉え、エンドロールとなります。
『メンフィス・ベル』感想です
1990年公開時の感想と30年後に観た感想の違い
ぼくは、『メンフィス・ベル』を公開時1990年に劇場で見ています。その頃ぼくは32歳でした。当時の感想は、正直、イマイチ感が強かったです。まあ点数つけるなら三つ星かな〜、、、そんな感じでした。
で、あれから30年が経ち還暦を過ぎて、配信で再見したのですが、いやはや、全く違った映画に思えました。
思ったのは、「兵士たち、みな、ガキすぎるじゃないか。ガキが対空機銃にしがみついて、必死に生きて帰ろうとする映画だったのか、、、」、、、でした。
VFXが当たり前となった2024年の今見直すと、確かに映像的にはしょぼいです。しかし、VFXがなかった時代の映画ですので、そこは差し引いて観なきゃあかん映画です。
空戦シーンや爆撃シーンは、実写や大戦当時の記録フィルムを編集でうまく繋げるなどして作り上げていますので、ツッコミは、ヤボというものです。
それより『メンフィス・ベル』のハナシの核は、年端もいかない若者たちの「必死さ」だと感じました。
「年端もいかない」彼ら搭乗員それぞれが、皆、普通のボーイズです。英雄的なナイスガイは一人もいません。
出発前の基地内のシーンでは、そんなボーイズそれぞれのキャラが丁寧に描かれます。そのシーンが長くてつまらない、、、と感じる人もいるかと思います。
しかし、そのシーン無くして、後半の爆撃行の中、ボーイズ誰もが思っている「正直、戦争なんてどうだっていい、生きて帰りたいよ、、、」という切実感は伝わらない、、、とぼくは感じました。
皆「どこにでもいるよ」的なキャラがスキです
リーダーである機長デニスは、その生真面目な性格から、みんなから「付き合ってられねーよ」と思われています。
爆撃手のヴァルは、カッコ付けで医大卒とウソをついていたことがバレる見栄っ張り。
副操縦士のルークは、自分の仕事が「副」なことが気に入らない。
航法士のフィルは、怖がりで、落ち着きがなく、辛抱ができない性格。
他の搭乗員たちも、クセがない優等生的なヤツは一人もいません。
いや、一人だけ優等生がいました。
クライマックスで瀕死の重傷を負ってしまう無線士のダニーです。
詩を書くのが好きなダニーですが、自作の詩を書き記したノートには、詩の上にぐしゃぐしゃと赤線が引かれています。それが何を意味するかというと、全く自分を認めていないということです。
このように登場人物は皆、ぼく自身思い当たる節がありすぎるほど人間的なのです。
そんな『メンフィスベル』の若者たちの俗っぽさ、弱さ、人間臭さがぼくは好きです。
対空砲の怖さ
ストーリー後半の爆撃行シーンでは、高射砲弾が炸裂する中をB17編隊が進みます。
このシーンは高射砲弾が至近距離で炸裂する怖さがリアルでした。
高射砲って、何が怖いかというと、破片なんですね。
命中弾はもちろん一発アウトで怖いわけですけど、機内に飛び込んでくる熱せられた破片が怖いことがさりげなく語られています。
「ダニーのノートに破片が飛んでくる。破片が乗っかったノートがすぐに焼けこげる」そんな描写を入れた脚本は職人技でした。
狭い機内の機銃手のリアル
『メンフィスベル』が他の戦争映画と違うところは、後半ずっと「狭い爆撃機機内で兵士たちはどうやって戦っているのか?」を見せられる部分だと思います。
狭すぎる機内での機銃手たちの戦い方に同情さえしてしまいます。
手動昇降レバーを回せ!
クライマックスの「着陸寸前に車輪が出ないハラハラシーン」は、わかっちゃいるけど手に力が入りました。
「緊急手動」のノロさは「電化自動装置」ってすごい!と思わせると共に、「人が精一杯成すことの凄さ」も感じさせるシーンです。
結局、映画が言いたかったことは、「どんなヤツらでも、精一杯成せば、それだけですごいコトなんだ」
それにつきる気がしました。
『メンフィス・ベル』と「ダニーボーイ」
映画では名曲「ダニーボーイ」がバリエーション変えつつBGMとして使われています。
これがいい!
そんな音楽バリエーションの中でも、特に素晴らしいシーンが、ジャズシンガーとしても有名なハリー・コニック・Jrが歌うシーンです。
出撃前のパーティ会場で「お前一曲やれよ」と仲間達から肩を押され、ピアノをつま弾きながら「ダニーボーイ」を歌うのですが、ビッグバンドをバックに途中からアップテンポに変調していくあたりは超ステキですよ。
「キーは◯でね」とバンドにひとこと声をかけるところなんて、「ちくしょーっ!かっこよすぎ!」って叫びたくなるほど、好きです。(キーの◯がなんだったか、忘れた笑)
『ダニーボーイ』歌詞と対訳
ダニーボーイの歌詞と対訳(意訳)がよくわかるサイトを見つけました。「世界の民謡・童謡〜worldfolksong.com」です。
以下、転載します。
+ + +
O Danny boy, the pipes,
the pipes are calling
From glen to glen
and down the mountainsideThe summer’s gone
and all the roses falling
‘Tis you, ‘tis you
must go and I must bide.ああ私のダニー
バグパイプの音が呼んでいるよ
谷から谷へ
山の斜面を駆け下りるように夏は過ぎ去り
バラもみんな枯れ落ちる中
あなたは あなたは
行ってしまうBut come ye back
when summer’s in the meadow
Or when the valley’s hushed
and white with snow‘Tis I’ll be here
in sunshine or in shadow
O Danny boy, O Danny boy,
I love you so.戻ってきて 夏の草原の中
谷が雪で静かに
白く染まるときでもいい日の光の中、日陰の中
私は居ます
ああ私のダニーよ
あなたを心から愛していますBut if ye come
and all the flowers are dying
If I am dead,
as dead I well may be,You’ll come and find
the place where I am lying
And kneel and say
an Ave there for me.すべての花が枯れ落ちる中
あなたが帰ってきて
もし私が既に
亡くなっていてもあなたは私が眠る場所を探して
ひざまづき
お別れの言葉をかけるのですAnd I shall hear,
though soft, your tread above me
And all my grave
shall warmer, sweeter beFor you will bend
and tell me that you love me
And I will sleep in peace
until you come to me.私には聞こえる
私の上を静かにそっと歩いても
私の墓は より暖かく
心地よい空気に包まれるあなたはひざまづき
言うのです 私を愛してると
私は静かに眠り続けます
あなたが帰ってくるその時まで
-「世界の民謡・童謡〜worldfolksong.com」より転載-
『メンフィス・ベル』ぼくの評価は?
公開時の時の感想は三つ星だったとすると、30年たって再度見た評価は、星三つ半にアップしてました。
星が一つと半分欠けた理由は、ドラマが完全美談で幕引きとなってしまっているところです。
細かいことは抜きに感動すればいいんだと思います。ぼくも2回ともめちゃ感動しましたから。
でも、「どう転んでも戦闘を美談で終わらせちゃあ、イケナイよなあ、、、彼らのその後ってどうなったんだろう??」と、もう一人の心の中の自分がつぶやくのでした。
最も『メンフィスベル』は批判系戦争映画ではなく、エンタメ系です。割り切って見ていい素敵な映画だと思います。
監督が批判的な意見持っていても、映画会社の大人の事情や興行成績ありますしね。。。
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(共に2024年5月現在)
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