こんにちは、映画好き絵描きのタクです。今回レビューで取り上げる映画は『ザ・ウォーカー』。
舞台は終末戦争で文明が滅びた世界。デンゼル・ワシントンとゲイリー・オールドマンが荒廃した世界に火花をちらすアクションムービーです。
アメリカ大陸を一冊の本を携えて西へ西へと歩き続けている男=デンゼル・ワシントンと、町を牛耳る男=ゲイリー・オールドマンの対決が、独特の映像トーンで描かれます。
原題は『The Book of Eli』。2010年のアメリカ映画。製作には『ストリート・オブ・ファイヤー』『ダイハード』『マトリックス』のプロデューサー・ジョエル・シルバーが参加しています。
『ザ・ウォーカー』予告編
『ザ・ウォーカー』原題『The Book of Eli』の持つ意味
邦題は『ザ・ウォーカー』ですが、原題は『The Book of Eli』です。この原題の意味を知って観るのと知らずに観るのでは映画の見方、感じ方が変わってくる映画です。
原題の『The Book of Eli』を直訳すると『エリの本』すなわち『エリの書』となります。
この「エリ」って日本人にはあまり馴染みのない言葉ですよね。
で、いろいろ調べてみたところ、この「エリ」はキリスト教での「神」を指す言葉なんですね。(ぼく自身知らなかった)
すなわち『The Book of Eli』は『神の書』=『聖書』となるのです。
映画を観ていくうちに主人公が持って歩いている本がストーリーの核となっていることはわかりますすし、『聖書』であるとこともわかります。
主人公のイーライという名前はエリとつながるわけで、「書を信仰の柱としているキリスト教文化圏に生きていてる人」と「聖書への知識が浅い人」では、感じ方が全く変わってくる映画のように思えます。
ちなみにぼくは後者=聖書の知識が浅い人=でした。
なので、ぼくの考察感想は、あくまでキリスト教的世界観にピンとこない大勢の日本人(多分)的レビューと思ってください。
では、まずはあらすじをまとめてみます。ネタバレありですので、映画を観たい方はスルーしてくださいね。
『ザ・ウォーカー』ネタバレあらすじ〜閲覧注意!
舞台は最終戦争後。文明が滅びた世界。主人公イーライはアメリカ大陸を西に歩き続けている。ある日、イーライは荒れ果てた町に辿り着く。そこはカーネギーがボスとして君臨する町だった。カーネギーは、ある本を探し続けていた。
イーライはカーネギーの屋敷に泊まることになる。
夜、イーライの格闘能力の高さを気に入ったカーネギーは、仲間に引き入れようと情夫の娘ソラーラを差し向ける。イーライの部屋をノックするソラーラ。仲間に引き入れるための色仕掛けだ。
しかしイーライは裏を察し、仕方なく部屋に招き入れるが手は出さす、朝までいていいとソラーラに言う。
翌朝、カーネギーは探している本をイーライが持っていることに気付き、差し出すよう求める。断るイーライ。許せないカーエギーは部下たちを引き連れ力ずくで本を奪おうと銃撃戦が始まる。
イーライの射撃能力は部下たちのそれを遥かに上回り、ほとんどの手下を撃ち倒し、カーネギーは足に被弾する。
街を出たイーライをソラーラが追う。
しかしイーライは、ソラーラを連れて行くつもりはない。彼女を騙し、消える。
それでもなおイーライを追うソラーラ。そんな彼女を辻強盗が襲う。
そんな彼女を再び救い出すイーライ。
自ずと奇妙な二人旅となる。
道中イーライはソラーラに、持っている本が一冊しかないことや、それを発見したいきさつを話す。
途中、二人は荒野の中、老夫婦の家に招かれる。いい夫婦だ。
しかしカーネギーたちは二人を追跡していた。
カーネギーとの銃撃戦の末、老夫婦は射殺され、ソラーラを人質に取られたイーライは、やむなく本を差し出す。
イーライを撃ち倒し、ソラーラを連れ去るカーネギー。
ソラーラは隙を見て車を奪い、イーライを助けに戻る。
カーネギーの目的は本だ。カーネギーはソラーラ逃亡を捨て置き、街へと戻る。
ソラーラの運転で西へと進んだ2人は、海岸にたどりつく。
対岸に見えるのはアルカトラズ刑務所あとだ。
ボートに乗ってアルカトラズに辿り着く二人。
アルカトラズには戦争が起こる前の文化を伝承しようとする住人達が作り上げたソサエティがあった。
イーライが運び続けてきた本、それは「聖書」だった。
イーライはそこで本の内容を住人たちに口伝する。イーライは「聖書」を一字一句違わずに記憶していたのだ。
一方、街に戻ったカーネギーは本に掛けられた鍵を開けさせて中身を確認する。
しかしそこに並ぶ文字は全て点字だった…。
イーライは、暗記していた聖書全ページを全て口伝し終え、力つきる。
ソラーラはイーライの遺品の刀を手に放浪の旅に出る。
『ザ・ウォーカー』感想
主役二人の火花スパーク演技とスタイリッシュな映像
この映画、荒涼かつスタイリッシュなカメラが全編にわたって強烈な印象です。
ぼくは冒頭からそのタッチにのまれました。
おまけにデンゼル・ワシントン演ずるイーライと、イーライから本を奪おうとする敵役カーネギーの戦いがこれまたクールでかっこいい。
なのでぼくはつい「スタイリッシュなディストピアアクション映画」と捉えてしまいました。
カーネギーが君臨する町にふらりと現れるイーライ。そして二人の戦い..とくれば、これはそう、西部劇によくある図式です。
特に敵役カーネギーを演ずるのは名優ゲイリー・オールドマンです。
全編通して二人の演技がバチバチ火花を散らして、アクション映画として観るなら、見応え十分な映画でした。
ドラマの中心は「聖書」
が、しかし、この戦いのドラマの中心にあるのは、一冊の本=「聖書」なのです。
ただのハデハデアクション映画とはちょっと違います。
世界で最も出版された書籍は「聖書」です。また、キリスト教文化圏の根底にあるのもまた「聖書」でしょう。
主人公と宿敵の名前=「イーライ」と「カーネギー」からして宗教世界と実利世界の象徴=戦いであることがわかります。
「イーライ」と「カーネギー」の戦いは、歴史の中で繰り返されてきた宗教観の教義の違いに起因した無意味な流血を揶揄しているように思えました。
それは現代社会に巣食う混迷を暗喩しているのかもしれないな、、、ぼくは、そんなことを考えていました。
しかし、そんなぼくの考えは、たぶんぼくがキリスト教徒ではない「異教徒」だから感じるのかもしれません。
「純粋に聖書を身近な存在として読んでいる人たちにとって、この映画がどう映ったのだろうか?」
そんな疑問があとを引きました。
素直な感想〜結構あちこちに残る疑問
超絶スペシャルな存在の「聖書」がストーリーの柱となるのであれば、映画の中にもっと宗教的な意味づけが欲しかった….これがぼくの素直な感想です。
ラストのアルカトラズ内でイーライが聖書の内容を口伝して丸く収まります。(暗記している)
しかし、イーライがなぜ点字の聖書を運び、なぜあれほど強かったのか?カーネギーはなぜ独裁者に上り詰めることができたのか?そんなシンプルな幾つかの疑問が残ったまま映画は終わり、結局、印象に残ったのは映像や演出のスタイリッシュさでした。
ただの流れものと悪役の対決ではない内容だった故に、登場人物のキャラクターの深掘りも欲しかったです。
『ザ・ウォーカー』ぼくの評価
『ザ・ウォーカー』、スカッと観れる映画だと思います。
辛い言葉も加えると、
「絵作り、キャストの演技・演出は素敵だったけど、ドラマが薄かった」となります。
ぼくの評価は星三つでした。
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