- 『十一人の賊軍』感想評価:星二つ半⭐️⭐️✨
脚本家笠原和夫「幻のプロット」を翻案したと評判の幕末アクション時代劇が『十一人の賊軍』です。「寄せ集めの犯罪者たちが砦をまもる、、、」って、それだけでワクワクするではありませんか。「砦」というワードにざわつかない映画ファン(特に男子)はいないでしょう。
チラシだってめちゃくちゃかっこいいんですよ。これはぜったい面白いはず、、、と、みてみました。
でもね、ちょっと残念感想だったんです。
いや、ちょっとじゃないな、、、ぼくはかなりな残念ムービーでした。
感想は正直に!が基本のムービーダイアリーズです。(どこかもお金もらってないしね)
では、ぼくにはどう映ったのか?、を、レビューします。(あくまで個人的感想です)
『十一人の賊軍』どんな映画?
まず、どんな映画か、情報列記しておきます。
脚本は冒頭でも書きましたが、『仁義なき戦い』の脚本家・笠原和夫「幻のプロット」と言われる原稿がモト。監督は白石和彌です(『碁盤斬り』『孤狼の血』『死刑に至る病』)。主演は山田孝之と仲野太賀。そして鍵握る配役に、阿部サダヲです。
以下がキャスティング。
キャスト/山田孝之 仲野太賀 尾上右近 鞘師里保 佐久本宝 千原せいじ 岡山天音 松浦祐也 一ノ瀬颯 小柳亮太 本山力 野村周平 音尾琢真 ゆりやんレトリィバァ 阿部サダヲ 長井恵里西田尚美 玉木宏 他
以下にどんな映画か、ざっくり書いておきますね。
1868年に起こった戊辰戦争のさなか、新政府軍と対立する奥羽越列藩同盟に渋々加入していた新発田藩の新政府軍への寝返り史実をもとに、11人の罪人が藩の命令により砦を守る壮絶な戦いに身を投じる姿を描いた、幕末アクション時代劇、です。
第37回東京国際映画祭のオープニング作品としてワールドプレミア上映されてます。鳴物入りです。
『十一人の賊軍』あらすじ
では、簡単あらすじです。
新潟の小藩・新発田(しばた)藩家老・溝口内匠は進退窮まっていた。
+ + +
舞台は戊辰戦争。外国から輸入した大砲、最新銃を武器に進軍を続ける新政府派「官軍」は「新しい時代を切り開<」という錦の御旗のもと、旧幕府軍を追い詰めていた。
新発田藩は、密かに官軍への寝返りを画策していたが、奥羽越列藩同盟軍が共に出兵を求め、新発田城へ軍を進めてくる。
奥羽越列藩同盟と官軍が鉢合わせてしまっては、新発田は火の海となること必至、溝口内匠は一計を案じる。
要衝にある【砦】で、官軍を食い止める策だ。
砦に集められたのは、殺人、賭博、火附け、密航、姦通…などで手縄となった男女十一人だ。
彼らには砦を守備した暁には恩赦を与えるという約束が交わされる。
人の道を外れた犯罪人たちはそれぞれの思惑を胸に、。圧倒的不利な戦いへ身を投じてゆく、、、。
『十一人の賊軍』あらすじクライマックスまで〜ネタバレあり
以下はネタバレになりますので、映画を見たい方はスルーしてください。
+ + +
彼ら=11人の罪人たちがなすべきことは、【官軍が砦へ攻め入るのを防ぐ】、ただそれだけだ。
死を覚悟していた彼らは、「勝てば“無罪放免”」という言葉を信じ、己の生ために突き進む。果たして、彼らは自由を掴み取ることができるのか???
しかし、戦いが進むにつれ、無罪放免は方便だったことがわかり、怒り心頭の罪人たちは砦を放棄しようとする。
しかし運命は、彼らを砦から解放することはなかった。
新発田藩、同盟軍、官軍…三者の思惑が交錯するなか、罪人たちは新たな砦の戦いへと巻き込まれてゆく。
そして、罪人たちを指揮する侍たちも、故郷への愛のみを旗印に、勝ち目のない戦いに身を投じてゆく。
戦いは、花火師だった男の機転を効かせた策が功を奏し、砦は無事守られたかに見えた。
が、しかし、新発田藩の謀略には、さらなる裏が隠されていた、、、。
『十一人の賊軍』感想です
小藩新発田が生き残るために、、、
とにかく戊辰戦争は、映画のテーマに事欠かない、面白い時代ですよね。
戊辰戦争をわかりやすくいうなら、「近代化の波が押し寄せる中ぶつかり合う新旧のプライドと、日本を真っ二つに分けた大戦争」です。
映画のテーマとしては面白くないはずがない。過去も『壬生義士伝』や『るろうに剣心』など、その時代を背景にしたオモシロムービーが撮られてきました。
『11人賊軍』は、新潟の小藩新発田藩の寝返りという、人間臭い歴史の片隅に光を当てたのが、とても素敵な視点でした。
新発田藩家老・溝口内匠役が、いい!政治家チックに悪いやつなんだけど、存在がいい!!で、演じているのは阿部サダヲですけど、阿部サダヲが怖いほど役にハマりきってます。
チャンバラと戦争映画がダブルスの魅力
奥羽越列藩同盟と官軍との戦いを柱に据えて、「藩の命運」をテーマにした点は、すごくいいヒキだったと、ぼくは思います。
幕末時代劇、それも戊辰戦争って、使われる大砲や銃など兵器も近代化が進んでいますから、それら小道具をうまく使うなら「アクション映画」としても最高のハレ舞台となる…と、ぼくは思っていました。
戊辰戦争は、チャンバラと戦争映画がダブルス!の魅力なのです…。
戊辰戦争×砦を護る×命知らずの犯罪人+大砲・銃器の小道具=コレは面白くならないはずないよな〜〜、が、チラシを手にした時の僕の直感でした。
ところが、大砲や官軍側の最新銃(多分)の怖さが、どうもストーリーから感じられない。
「砦がわの戦力ハンデ、やばいだろ、、、」が攻防アクションのキモなはずなんですが、見ていて、なんか、気持ちが上滑り…なのです。
バイオレンスというよりも…
「バイオレンス」のコピーもチラシに踊ってました。
ぼく、正直に言います。…バイオレンスが好きなんです。
そのダブルスがバイオレンスのキモになるんだろうな、、、と思いきや、ここで軽い裏切りに会った気分…。
どういうことかというと、「バイオレンス」というより、体が肉片と化し吹っ飛んでいったり、砲弾当たった兵士が粉々になったり、、、、という「グロ〜〜」がようはこの映画の『バイオレンス』というくくりだった…そんな肩透かし感でした。
ぼくの求めていたバイオレンスアクションとは、ちょっと意味が違っていたような、、、、。
僕の期待の仕方が、たぶん間違っていたんですね、、、残念。
罪人たちの背景が薄い
さらに残念だったのは、この映画、ストーリーを語る上で罪人たちのキャラが迫ってこないんです。
これにはもう脱力。
要は、罪人とはいえ、どんな人間なのか??どんなふうに生きてきたのか?が大事なはずなんですが、そんな彼らのバックボーンがはっきりされていない。。。。
アクション抑えめでもいいから、罪人たちの人物像の陰影をしっかり描き出して欲しかったです。…まあ、僕の勝手な思いですけど。
とにかくうるさい!が残念、、、
『十一人の賊軍』はドンパチアクション時代劇ですから、セリフがドンパチに負けないようにうるさいのは当たり前なのかもしれません。
でも、でも、うるさすぎ。
いつも何言ってるのかわからないくらいのシャウトしすぎ。
これはもう俳優さんのせいではなく、演出の責任ですよね。必死に演じている俳優さんがかわいそうなくらいです。
うるさか感じたのは台詞回しだけではありません。音楽も、うるさい。音楽は脇役なはずなんだけど、イラつくくらいにうるさい。
「もっと11人のドラマが見たいよ、、、」と、ぼくは途中から放り投げモードでした。
録音賞を受賞したようですけど、僕にはその意味、わからない。
「過ぎたるは猶及ばざるが如し」、、、これがぼくの『十一人の賊軍』感想でした。
「ダラダラ〜ドンパチ〜〜、ダラダラ〜ギャーギャー、ドッカーン、、、」
で終わっちゃう映画…。
↑すみません、これが僕の正直感想です。
時代劇ファンの皆さんやチャンバラ映画好きの皆さん、ごめんなさい。でも反論は受け付けません。何度も言いますが、このサイトはあくまで独断であり、個人的感想サイトであり、議論サイトではありませんので、、、。
唯一の見どころ「弩級アクション」は中野 太賀さんの殺陣
しかし、しかし、悪いところばかりではありません。いいところも書いておかないとフェアじゃない。
すごかったのは、クライマックスの中野 太賀さんの殺陣!これは気迫、すさまじかったです。名殺陣シーンです。
ネタバレになりますので映画見る方は閲覧禁止項目ですけど、その殺陣シーンは阿部サダヲさん演じる溝口内匠と対峙しての長回しなのです。
西部劇に例えるなら、ラス向かい合う主人公と敵ですよ。しかし、意に反して「悪」が勝つ。
その殺陣シーンだけは、超圧巻でした。
『十一人の賊軍』ぼくの評価
映画は結果、新発田藩が戦火巻かれずに平和な世界で丸くおさまった…かに見せて終わっていきますが、ラストのラスト、こうきたか!的結末エンドが待っていました。悪行のエニシは回り回って、、、、的終わり方、僕、好きでした。
結論。
全編通して「あのシーン良かったけど、どうも脚本がこれではなあ、、、」「クライマックス最高だったけど、そこに至るが納得できないんだよなあ」と、僕の評価は、星二つ半⭐️⭐️✨でした。
コメント
残念な映画でしたね。私の場合は「賊軍」という言葉の扱い方が抑々気に入らなかった。官軍賊軍と言いますが、官軍は天皇の軍隊ですから、賊軍とは天皇に反旗を翻した軍隊ということになります。でもね
奥羽越列藩同盟側には、天皇に弓を弾くなんて発想は1ミリもなかった。彼らが弓を弾いたのは君側の奸薩長に対してです。だから彼ら奥羽越列藩同盟側が、薩長のことを「官軍」と呼ぶはずがなないんです。だって薩長を官軍だと認めてしまったら、自分たちは「賊軍」であるということを認めてしまうことに繋がるから、だから同盟側が薩長を「官軍」と呼ぶなんてありえない。
にもかかわらず、新発田藩に出兵を催促する長岡藩の藩士は、薩長のことをあっさり「官軍」と呼んでる。もうこの時点で、この映画ダメだなと思いましたね。
原敬は「勝てば官軍負ければ賊」という言葉にずっとこだわり続けた。そこにあったのは立場の違いだけで、誰も天皇陛下に弓を弾こうなどとは考えていなかった、賊なんていなかったんだという意味の言葉を、原敬は残しています。あなたも盛岡人なら知ってるでしょ?
そうした同盟側のこだわりを、この映画はまったく考慮すらしていない。賊軍とは単なる反逆者、くらいにしか捉えていない。こんなのダメ。
全然ダメ。
アクションも薄かった。橋に爆弾仕掛けるのになんでわざわざ橋の真ん中まで行くの?端っこでいいじゃん。
ただラストシーンの仲野太賀くんの殺陣は素晴らしかった。あそこだけは高く評価します。
『侍タイムスリッパー』は会津の方々の気持ちを思いやりながら、映画なりの着地点を示していました。ああでなきゃいけません。
ここまで残念となったのは、プロデューサーの思惑や製作委員会の横槍が入ったゆえなのかもしれないですね。
戦いのシーンへの脚本考察の浅さも魅力を半減させていたと思います。
ラストの仲野太賀さんの殺陣は、ぼくも唯一拍手を送ったアクションシーンでした。