『リベリオン・ワルシャワ大攻防戦』ワルシャワ蜂起に立ち上がった若者たちの悲劇
1944年、ドイツ占領下でのポーランド・ワルシャワ蜂起をポーランドの若者たちの目線で描いた戦争映画です。
ワルシャワ蜂起は、軍と市民の抵抗が失敗に終わり、完膚なきまでにワルシャワの町が破壊し尽くされたことでも有名です。
蜂起失敗が町壊滅まで至った悲劇は、いくつもの映画の中で取り上げられています。
有名なところではアンジェイ・ワイダ監督の『地下水道』やロマン・ポランスキー監督の『戦場のピアニスト』が思い出されます。
その悲劇的なワルシャワ蜂起を、抵抗運動に参加したポーランド人の若者たちの目線でVFX技術を使いリアルに描いた作品です。(2014年・ポーランド映画)
『リベリオン・ワルシャワ大攻防戦』あらすじ・ネタバレ閲覧注意
あらすじはネタバレを含みます。映画を観る方はスルーしてください。
+ + +
ナチスによるポーランド占領から5年の1944年。ソ連軍の進撃は、ワルシャワの手前まで迫っていた。
主人公はそんなワルシャワに母と小さな弟と三人で暮らすステファン。ポーランドの若者たちは祖国の解放を信じ、次々とレジスタンス抵抗組織に身を投じていた。
ステファンもそんな流れに母の反対を押し切り、レジスタンスに参加する。同じ民兵組織に参加していた女性アラにほのかな想いを寄せるステファン。
8月1日、ポーランド軍はついにドイツ軍に対し蜂起。初戦はドイツ軍の制圧に成功したかに見えたが、頼りにしていたソ連軍は河の対岸で進軍をストップしてしまう。
ドイツ軍の反撃により、次々と倒れてゆく仲間たち。ステファンも負傷、母と幼い弟はドイツ軍に自宅前で射殺される。ステファンは病院に担ぎ込まれるがアラが爆撃寸前に救出。破壊されゆく街の中を避難する。
ドイツ軍の爆撃と攻撃の前に無惨に殺されてゆく、罪もない市民たち。美しいワルシャワの街は完膚なきまで破壊し尽くされ、地下水道に逃れるステファンとアラ。
しかし地下水道も阿鼻叫喚の地獄だった。下水道から辛くも脱出したステファンとアラ。ステファンはアラに黙ったまま、本隊へ復帰する。
アラは消えたステファンを探し瓦礫の街を彷徨い、一棟の廃墟のような野戦病院に辿り着く。そこもまた負傷者が所狭しと横たわる地獄絵図だった。
離れ離れになった二人の先に待っていたのは、想像を絶する‘‘戦場の破壊”だった……。
『リベリオン・ワルシャワ大攻防戦』解説
第二次世界大戦でもっとも激しく破壊された首都はどこでしょうか?
答えは、ポーランドの首都ワルシャワです。
街区が全て瓦礫となり、戦後、古い設計図を元に奇跡的に街を再建したという話は有名です。
今、何も知らずにワルシャワを訪れたならば、まさか80年前に完璧な破壊をされた歴史を持っているとは、誰も思わないでしょう。
それほどまで1944年8月のワルシャワ蜂起へのドイツ軍の制圧は、蜂起軍に対しても、また、建物に対しても徹底したものだったのです。
『戦場のピアニスト』を再見する機会があり、その中で描かれていたワルシャワ蜂起をポーランド側から描いた作品がないものか…と探して見つけた映画が、この『リベリオンワルシャワ大攻防戦』でした。
ワルシャワ蜂起の実態を最新のVFXを使い、軍人目線というよりも、蜂起に参加した若者たち目線で描いた点が、ぼくがこの映画を見てみようと思ったきっかけでした。
『リベリオン・ワルシャワ大攻防戦』どこで見れる?配信は?
残念ながら配信はされていません。
ぼくは中古DVDを探して取り寄せました。(2025年2月時点)
『リベリオン・ワルシャワ大攻防戦』感想
さて、『リベリオン・ワルシャワ大攻防戦』の感想です。
老若男女が立ち上がったワルシャワ蜂起
ドイツにポーランド占領が1939年。5年の間、ワルシャワはドイツの占領下にありました。
その間、ユダヤ人ゲットーと呼ばれる街区が作られて、ユダヤ人ホロコーストへの出発点ともなりました。
映画のワルシャワマチナカシーンでは、見逃してしまうかもですが、レンガ壁が出てきます。それはユダヤ人を押し込めたゲットーの壁です。
映画の空気感って、そんな細かなところから発せられるものですよね。
そんな細やかな美術のこだわりが、抑圧されたワルシャワ市街地の空気をうまく出していました。
町が壊れる〜ワルシャワ蜂起の実態
蜂起が始まりドイツ軍の反撃で、ポーランド軍と主人公ら地下組織は劣勢になっていきますが、その背景となる破壊されるワルシャワの町のセット(VFRかもしれません)がリアルで悲惨です。
一体どうやって撮影したんだろう?と、首傾げるほどの美術のリアリティに脱帽でした。
ステファンの無言の空ろな表情にイラつく
物語の主人公は10代の若者ステファンと友人たちです。映画は、地下組織軍に組み込まれた彼らの戦場体験が追体験できる感じです。
しかし、ぼくは全編通して奇妙な違和感を感じました。
どうもリアリティある廃墟セットの醸し出す悲惨さと、主人公ステファンの存在が、僕の中で噛み合わないのです。
ステファンが負傷した後、彼にはほとんどセリフらしいセリフがありません。それは多分、銃槍を負ったショック表現ゆえの「セリフなし」だと思います。一方ステファンを介護するアラにはしっかりとセリフがある。
ただただ呆然と瓦礫の中を彷徨い移動していくステファンの無言の空ろな表情に、次第にイライラが募ってくる、、、ひいてはアラの表情にさえそんなイラつきが伝染していく、、、それが僕の正直な印象でした。
それはなぜか?考えてみました。
ステファンがアラに恋心を抱くカットが「二つ」あります。
蜂起前のゆったりとした時間軸の中での川で泳ぐシーンが一つ。そしてもう一つは市街戦の最中のカットです。
それぞれがそれぞれ、監督のこだわりを感じる作りになっています。例えば市街戦カットでは向き合う二人を捉えるカメラですが、VFXスローモーションを使い、行き交う弾道が二人を避けてゆく印象的なシーンとなっています。
この「VFXスローモーション」は他のシーンでも何ヶ所か使われますから、それはもう「監督の映像アート表現へのこだわり」なんだと僕は理解しました。
しかし、それが逆にドラマから浮いており、他のシーンとの断絶を作ってしまっているように感じてなりませんでした。理解はしましたけど、納得はできなかったのです。
そんな監督の「こう表現したいんだ!」という強いこだわりが浮き足立って「チグハグ感」を生んでしまったように思えて残念です。
チグハグ感が残念
今、「チグハグ」感と書きました。
全編通して僕がずっと感じていたのは、その「チグハグ」感でした。
ワルシャワ蜂起を最先端映画技術で再現するというのが、この映画の目指すところだったと思うのですが、オープニングからエンディングまで、ぼくの心はドラマに集中することができず、ドラマ引っ張られ度に置き換えるなら掛け率5割というところ(なんだそれ?)
それは延々と監督の表現したいことと映画自体が目指したいところがずれていたことによるように感じています。それが『リベリオン・ワルシャワ大攻防戦」のチグハグ感でした。
この映画は、テーマがテーマだけにポーランド映画界のすごいエネルギーが注がれたんだと思います。(たぶん)それが十二分にわかるだけに、惜しかったです。
『リベリオン・ワルシャワ大攻防戦』ぼくの評価は?
戦争映画が好きなぼくです。実はこの映画にはかなり期待していました。
しかし感想に書いた「チグハグ感」で、結果、評価は、「星二つ半⭐️⭐️✨」と惜しい映画となりました。
それでも、『リベリオン・ワルシャワ大攻防戦』は、ワルシャワ蜂起のポーランド側目線と破壊、悲惨さがしっかりと学べたので、見てよかったです。
でも、、サブタイトルが引いてしまうんだよね、、、「大攻防戦タイトル」はなんとかならなかったかな、、、。おおかたそのテのタイトルがつく映画にはボク的にガッカリムービーが多いので、、、。
ぼくが、もし「ワルシャワ蜂起」を調べようと思っていなかったら、、、タイトルにドン引きして見なかっただろうなあ…。
『リベリオン・ワルシャワ大攻防戦』スタッフ・キャスト
監督・脚本 ヤン・コマサ 撮影マリアン・フロコップ
キャスト ジョゼフ・パウロフスキー ゾフィア・ウィクラッチ アンナ・フロクニャック マウリシー・ポヒエル 他
『リベリオン・ワルシャワ大攻防戦』トレイラー
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