映画音楽〜有名作曲家と名曲の数々〜『大脱走』『荒野の七人』のエルマー・バーンスタイン

映画の周辺

今回のムービーダイアリーズは、音楽ネタ。ぼく自身が何度も繰り返しレコードを聴いたサントラとその作曲家を取り上げます。受験やビジネスにも、いや、恋愛においてだって「傾向と対策」って必須だったりしますが、作曲家にも、映画のジャンルごとに「傾向と対策」があるんだろうな…って思います。戦争映画のそれは、マーチで決まり!だった時代がありました。ウェスタンならこんな旋律!みたいな。1960〜70年代が多分そう。今回はそんなマーチ名曲『大脱走』や、西部劇『荒野の七人』の名曲を産んだ『エルマー・バーンスタイン』を、彼自身が指揮棒を振っているyoutubeクリップを挟みながら取り上げます。200本を超える映画に音楽を書いたエルマー・バーンスタインって、どんな人?

エルマー・バーンスタインをぼくが初めて知ったのはマーチ

1963年、映画史上に燦然と輝く戦争映画が撮られました。『大脱走』。原題『THE GREAT ESCAPE』。もちろん若い世代の方では、知らない方もいると思います。今にタイトルをまじまじと見ると、「邦題、まんまやねん!脱走に大つけただけ?」と突っ込まれそうですが、そんなツッコミをはねのけるパワフルカッコいい映画でした。そのマーチを作曲したのがエルマー・バーンスタインです。

『大脱走』はスティーブ・マックィーン、ジェームズ・ガーナー、リチャード・アッテンボローといった名優揃い。スター選手数名起用が当たり前だったのかな、と思えるほど。戦争映画というより、脱走というゴールにかけるスポーツチームを観ているような映画です。ちなみに実話をベースにした映画ですよ。

エルマー・バーンスタインは、その『大脱走』で、ひねりの効いたマーチを作曲しています。僕が初めてバーンスタインの名前を知ったのは、1974年くらい映画音楽にハマり始めて小遣いで買った『大脱走のマーチ』のサントラ・ドーナツ版でした。

作曲家エルマー・バーンスタインの略歴

Elmer Bernstein(画像出典:Wikipedia)

エルマー・バーンスタインは1922年生まれ。お父さんがウクライナ人、お母さんがハンガリー人。東ヨーロッパからアメリカに渡ってきた移民です。子供の頃からショービジネスに子役で出たりしていたようですが、音楽が性に合ったようで、ピアノを学び、のちに映画音楽の道に進みます。

初めて映画音楽を担当したのは、1952年。30歳の時です。映画のタイトルは『突然の恐怖』。スリラー映画です。(ぼくも初めてこの映画の存在を知りました)

その後、2002年まで、年に一本〜二本の映画の音楽をコンスタントに作曲。有名な作品には、『十戒』(1956)『荒野の七人』(1960)『レマゲン鉄橋』(1969)『ゴーストバスターズ』(1984=レイパーカージュニアの曲でヒットしましたが、エルマー・バーンスタインも二曲だけ書いてます)『レインメイカー』(1997)といったところがあります。

『荒野の七人』はほぼ誰でもが知っている音楽ではないかと思います。アカデミー賞音楽賞にノミネートされた回数はなんと14回。(作曲賞・歌曲賞・ミュージカル映画音楽賞)調べてぼくもびっくりしました。アカデミーノミネートの常連だったんですね。

1968年、ミュージカル映画、『モダン・ミリー』でアカデミー作曲賞を受賞。名匠というにふさわしい映画音楽作曲家です。

『エデンの彼方に』(2002年 監督:トッド・ヘインズ キャスト:ジュリアン・ムーア、デニス・クエイド)の作曲を最後に、2004年に亡くなりました。

『大脱走のマーチ』

さて、『大脱走のマーチ』です。超絶有名な曲です。最初の四小節から次の四小節に移るとき、微妙に音程をずらすところなんて、何度聞いても渋いなあと唸りますし、その後に続く小節に、多分バス(チューバ)に「ボン、ボン、ボン、ボーンボ♪ボン、ボン、ボン、ボーンボ♪」という静かなリズムを刻ませるあたりは「きたぞきたぞ」とワクワクします。バス(チューバ)の使い方、絶妙です。では、オリジナルサウンドトラック版の『大脱走マーチ』です♪

『大脱走マーチ』は国内外問わず多くの吹奏楽団が演奏していますが、次のクリップは見つけて驚きました。

エルマー・バーンスタイン自らが指揮棒を振っているオーケストラ版の『大脱走マーチ』です♫何とも優しそうなおじいさんではありませんか。そして、自らの曲を指揮する姿のなんと嬉しそうなこと。

バイオリン奏者が「口笛」を吹き入れるあたり、ニヤッとしてしまいました。

さらに、YouTubeで音楽を探していたら、サントラに乗せて撮影当時の様子と、そのロケ地の今を比較しているクリップがありました。

大脱走のロケ地をめぐる、なんて聖地巡礼旅もなかなか良い趣味。それもバイクで巡れたらパーフェクトかもしれません。ちなみにドイツのフュッセン(ノイシュバンシュタイン城観光の起点となる町)でロケされていたなんて知りませんでした。ぼくは過去、フュッセンの郊外の旅籠に泊まったことがあります。知っていたら間違いなく聖地探しをしていたな。悔しい。

ついでにもう一本。男声合唱の雄、ミッチ・ミラー合唱団による『大脱走マーチ』。

個人的にミッチ・ミラー合唱団、当時レコードも持っていてよく聞きいていました。男声合唱が映画の雰囲気をうまく表現しています。いまだに聞くと笑顔になります。ちなみにミッチ・ミラー合唱団は『史上最大の作戦』や『戦場にかける橋』も『大脱走』と同じように歌っています。

 

『荒野の七人』サウンドトラック

世界的大ヒットの西部劇『荒野の七人』。シナリオのベースが黒澤明監督の『七人の侍』だったということは有名です。監督はジョン・スタージェス。俳優陣は、ユル・ブリンナー、スティーブ・マックイーン、イーライ・ウォラック、チャールズ・ブロンソン、ロバート・ヴォーン、ブラッド・デクスター、ジェームズ・コバーン、ホルスト・ブッフホルツ。…と改めて今見ると、すんごい配役キャスティングですね。

音楽は、今改めて聞くと、主旋律があたかも西部の荒野を吹き抜ける風のよう。どこからかきて村人のために戦い去っていくガンマンたちの姿が、メロディで見事に表現されています。たまにテレビコマーシャルにもアレンジされて使われていたりしますが、こういう映画の音楽だったのです。散々聞いたように思っていましたが、改めてエルマー・バーンスタインの職人技を感じます。

↓こちらにバーンスタイン指揮の『荒野の七人』をアップします。

『モダン・ミリー』アカデミー作曲賞作品trailer

最後にモダンミリーの予告編を。実際に音楽賞を受賞したのは、1968年のミュージカルコメディ映画、『モダン・ミリー』です。(『モダン・ミリー』の主役は『サウンドオブミュージック』『メリー・ポピンズ』『引き裂かれたカーテン』のジュリー・アンドリュース。監督は『明日に向かって撃て!』『スティング』『華麗なるヒコーキ野郎』のジョージ・ロイ・ヒル)

ぼくはこの映画を知らなかったのですが、監督が個人的に好きなジョージ・ロイ・ヒルですし本編もチェックしてみたいと思います。

『モダン・ミリー』は日本でも舞台で公演されていること、今更ながらはじめて知りました。

こう見ると、映画音楽作曲家エルマー・バーンスタインは、改めて歴史に名を刻み、時代を超えた作曲家だな、と思いました。




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