ネタバレ考察『カプリコン1』あらすじ感想評価レビュー|絶妙なテンポ展開とセリフが粋!

カプリコン1 スリラー・SF・アクション

 こんにちは!映画好き絵描きのタクです。今回のレビュー作品は1977年公開の米英合作映画『カプリコン1』です。上映時間2時間9分。

ストーリーはこうです。

NASA火星探査ロケット打ち上げるが、探査映像はなんとセット撮影によるでっちあげ。宇宙飛行士たちはその内幕を知ったため消される運命に…その事実を嗅ぎつけた記者が宇宙飛行士たちを助けるために奔走する、、、と言う内容です。

火星からの映像がフェイクだったという設定が、当時めちゃくちゃ評判をよびました。

ぼくは公開当時劇場で観て、そのセリフ回しのかっこよさとストーリーの進め方に拍手した映画でもありました。

その『カプリコン1』を47年ぶりに配信で見つけて再見。

果たして半世紀ぶりにみた『カプリコン1』は、47年後のぼくにどう映ったか?

まるでタイムマシン感覚。

それがですね、驚くことなかれ、クライマックスまでグイグイと引っ張られたのでした。



『カプリコン1』予告編

『カプリコン1』解説

監督と脚本はピーター・ハイアムズ。出演はエリオット・グールド、ジェームズ・ブローリン、 O・J・シンプソン、カレン・ブラック他。

ピーター・ハイアムズはアクション系の監督です。『アウトランド』『カナディアンエクスプレス』がありますが、ぼくは残念ながら『カプリコン1』以外みた事がありません。

フェイクで火星探査をでっちあげるという内容だけに、NASAは協力を拒んだというエピソードも伝わっています。

音楽はジェリー・ゴールドスミス。映画音楽界の大御所です。緊迫感ある序曲で映画をカバーしています。



『カプリコン1』あらすじ

冒頭は人類初の有人火星探査宇宙船カプリコン1の打ち上げシーンで始まる。カウントダウン直前、宇宙飛行士のブルーベイカー、ウィリス、ウォーカーは船外に連れ出され、古い基地へと移送される。

ロケットは無人のまま打ち上げられる。

3人には計画責任者キャラウェイ博士から、事情を説明される。

それは、カプリコン1の生命維持装置不具合が発覚。計画遂行が不可能となったが、計画不履行となればNASAの予算が大幅に削減される。その事態を避けるため、フェイク映像で火星探査をでっちあげる…という計画だった。

飛行士達は断るが、家族の命の危機を仄めかせられ、やむなく承服。セットで録画し、世界に公開するフェイクプロダクトに協力する。

しかし、カプリコン1司令船の大気圏突入時に、防護シールド剥離が発生、司令船は大気との摩擦熱で消滅してしまう。

すなわち「3人は死んだ」ということだ。

3人は身の危険を感じ、砂漠の基地から脱出する。

そのころ、新聞記者のコールフィールドは、計画の奇妙さに気づいたNASAの友人からその情報を受けるが、友人宅を尋ねると、他の人間が住んでいる。

友人の存在が消されてしまったことに気づいたコールフィールドもまた何者かによって命を狙われる。

何かが見えないところで動いている。コールフィールドは記者のカンに従い、飛行士の一人ブルーベイカーの妻に取材を申し入れる。コールフィールドはその取材で得たいくつかのヒントから、「ブルーベイカーが妻に対して火星探査計画は作り物だということを知らせようとしていた」ことに気づく。

飛行士たちは脱出したものの砂漠を彷徨うことを余儀なくされ、二人は捕まってしまう。残された一人はブルーベイカー。

コールフイールドはヒントを手繰り寄せ、同僚ジュディの助けを得て、ブルーベイカーを救出するため砂漠に向かう…。



『カプリコン1』あらすじラストまで。ネタバレ注意!

コールフィールドは、農薬散布の複葉機のパイロット、アルベインを雇い、砂漠にブルーベイカーを探し当て救出するが、二機の戦闘ヘリに追撃される。

アルベインの機転で戦闘ヘリを岩山に激突させ、無事離脱。

ブルーベイカーは自分自身の追悼式典に現れ、カメラは驚きと喜びの妻と子供を捉える。

家族の元へと走りよるブルーベイカー。

エンドクレジット



感想・考察〜今見てもイケてる『カプリコン1』

3つのシーンが絶妙に絡み合う脚本がスゴイ!

とにかく何度も書きますが、展開の絶妙さは、47年前の映画とは思えないほど絶妙です。

あらすじで書いた通り、状況が刻々と変わるのですが、その変わり方を「宇宙飛行士目線」の状況をわからせるセリフと「NASA目線」のセリフのない状況カットでうまい具合に見せていく脚本は超絶です。(褒めすぎか?いや、いいんだから褒めましょう)

例えばこんな感じ↓

カプリコン1の司令船の大気圏突入時に、防護シールド剥離が発生、司令船は消滅する。

すなわち3人は死んだということになる。

このシーケンスでは、キャラウェイ博士の部屋と主人公たちの隔離されている部屋の、二つのシーンが、かわるがわる映し出されます。

この交互シーンを繰り返すことで、「仕組まれたカプリコン1の失敗」と、「3人の宇宙飛行士たちは、生きていると辻褄が合わなくなる…ヤバい状況」をスパッと説明します。

そんな「歯車噛み合わせ演出」は見事というしかありません。

また、宇宙飛行士3人の逃亡脱出に至るシーンにおいては、ブルーベイカーの「言いたいことはたくさんあるが、行こう」という超シンプルなセリフでドラマを前に進めます。

↑こんなセリフを起承転結の「転」シーンでサラッと言わせるなんて、そぎ落としの美学さえ感じます。

そんなふうに、ハメられた宇宙飛行士たち、そしてハメたキャラウェイ博士、さらには謎を解き明かそうとする新聞記者コールフィールドそれぞれ3つの舞台が組み糸のように絡みつつストーリーを前に前にとグイグイ推し進めるのが『カプリコン1』です。

その脚本パワーは今見てもスゴイと思います。



キモは3人の宇宙飛行士の必死の逃亡

映画の主役はブルーベイカー、そして飛行士仲間のウィリス、ウォーカーの3人です。

NASAにハメられた彼らは、家族をいわば人質に取られたも同然となり、仕方なく火星探査映像フェイクに協力するのですが、それぞれの心のうちも早い展開の中でもしっかり見せます。なので、後半砂漠で逃げるシーンの壮絶さが生きてきます。

以下、砂漠逃亡シーンの見どころを書きますがネタバレになります。映画を観たい方、スルーしてね

砂漠逃亡シーンで二人は捕まってしまいますが、その「捕まった状況」をどう見せるか??ここでもピーター・ハイアムズの演出脚本が光っています。

どんな具合に光っているか?というとですね、まずはブルーベイカーがサバイバルキットから照明弾を他の二人に渡し、こう言います」

「照明弾は捕まった時に打ち上げろ」

その後、カラカラに乾いた砂漠を逃亡のすえ、一人また一人と捕縛されます。

しかし、映画では捕まったところは見せないんですね。

遠くに打ち上げられた照明弾の音と微かな光だけで、彼らが追跡者の手に落ちたことを観客に知らせます。

この絶望感を表す演出は職人芸です。



武装へリの怖さ演出がスゴイ

『カプリコン1』の最も怖い演出は、砂漠を逃亡する3人を追跡する2機の武装ヘリの映し方です。

まるでただの機械が生きていて意思を持っているかのような絵作りをしているのですよ。

ヘリの操縦士はほとんど見せずに、ヘリを人に見立てたような演出が粋なのです。そして、怖い。この演出の怖さをパクった、おっと失礼!上手に取り入れたのが、数年後に作られた『ブルーサンダー』でしょう。(この映画も面白かった。好き。)



クライマックスは最先端武装へリとオンボロ複葉機のチェイス

クライマックスのヒューイ武装ヘリと複葉機チェイスにも、やられましたね。

ブルーベイカーを救出したコールフィールドが乗るオンボロ複葉機を武装ヘリ・ヒューイヘリコプター2機が追いかける空中戦なのですが、ハイテク対ローテクの戦いは、なんでこうも人を惹きつけるんでしょうね。

ちなみにオンボロ複葉機を操縦しているのは、今は懐かしいテリー・サバラスです。

彼は、まあ、憎いセリフしか吐きません。美味しいとこをしっかり持ち逃げしています。

どうやってテリー・サバラス操縦する複葉機がハイテク戦闘ヘリから逃れるか??が気になりますよね?

ネタバレ、バラしましょう。 でもでもしかし、ここまで読んで「映画を観たくなった!」方は、絶対スルーしてください!

そそり立つ崖にぶつかる寸前に、複葉機は農薬を散布。後方から迫るヘリに目眩しをかけ、急上昇。ヘリは崖に激突します。

農薬ですよ。武装ヘリに、農薬で立ち向かうんです。その見事なローテクぶりにニヤニヤしてしまいます。

まあ、正直ノンビリとしたチェイスです。

ですが、公開当時は、それでも手に汗を握ったものです。その後の『トップガン』に比べると赤ちゃんの追いかけっこに近いですけど、70年代のスピード感として楽しむのが吉ですね。



コールフィールドのセリフ掛け合いが粋

その昔、ハードボイルド小説というジャンルがありました。どんな本でも主人公たちは短いセリフをテンポよくかわすのが定番のジャンルでした。(なぜか、悲しいかな過去形)

『カプリコン1』では、そんなハードボイルド小説さながらのセリフの掛け合いが楽しめるのです。特に新聞記者コールフィールドのセリフの掛け合いは聞きものですよ。よくもまあ、ここまでテンポよくかっこいい(渋すぎ)セリフを開発できるもだ、、、と感心してしまいます。多分、そんなシーン専門のゴーストライターでもいたんじゃないのかな。



『カプリコン1』ぼくの評価は?

48年の時を経て再会した『カプリコン1』は、やはり楽しい映画でした。ハラハラドキドキ感は変わりませんでした。ツッコミどころはいくつかあるけど、公開当時高校生だった時も目一杯楽しませてもらった記憶があります。ということで星四つ⭐️⭐️⭐️⭐️です。

ラスト、スローモーションがストップモーションに変わって終わるのは、1970年代という時代を感じさせる古さがあります。さすがに苦笑いが出てきます。2024年の今やったらお笑いネタにしかならない撮り方でしょう。が、そこは時代が変わったんだ、当時は感動したんだよ、突っ込んではいけないんだよ、と、ぼくは笑って許しました。




『カプリコン1』スタッフ・キャスト

監督・脚本/ピーター・ハイアムズ

キャスト/エリオット・グールド(コールフィールド=記者) ジェームズ・ブローリン(ブルーベイカー) ブレンダ・バッカロ(カイ・ブルーベイカー) サム・ウォーターストン(ウィリス) O・J・シンプソン(ウォーカー) ハル・ホルブルック(キャロウェイ博士) カレン・ブラック(ジュディ=コールフィールドの同僚) アルベイン(テリー・サバラス=複葉機パイロット)

『カプリコン1』配信・レンタル先は?

以下のサービスでレンタル配信されています

U-NEXT レンタル 初回31日間無料
hulu 見放題配信 無料期間なし

カプリコン1パンフレット

これは公開当時パンフレット表紙




コメント

  1. オーウェン より:

    この映画「カプリコン・1」は、SF政治スリラーの傑作だと思います。
    1978年のお正月映画として「オルカ」と二本立て公開され、当時、興行の本命が「007私を愛したスパイ」、対抗馬が「カプリコン・1」と言われていたそうです。

    USAのヒューストンにあるNASAは世紀の宇宙ショーにわきかえっていました。人類初の有人火星宇宙船の打ち上げが今まさに行なわれようとしていました。
    発射5分前、カプリコン1号から三人の宇宙飛行士(ジェームズ・ブローリン、サム・ウォーターストン、O・J・シンプソン)がいずこともなく連れ出され、一方、ヒューストンでは無人のカプリコン1号が火星を目指して打ち上げられました。

    三人の宇宙飛行士達は閉鎖された空軍基地へ連れて行かれ、格納庫に作られた宇宙船と火星のセットから全世界に向けて偽のTV放送をさせられる事になります。

    かつてアポロ11号がTVの画面に月面の映像を送って来た時にあれは実はスタジオでの創作画面なんだというジョークが日本でも生まれたそうですが、アメリカでも同じ事を考えた人がいて、これがこの映画が製作される際のアイディアになったものと思われます。

    しかし、それはまだ話の発端であり映画の本筋は別のところにあります。
    この偽のTV放送を成功させた後、今回のカプリコン1号には何か裏がありそうだと新聞記者の一人が気付きます。
    この疑惑を探り始めると、途端に何者かによる妨害があり、NASAのコンピューター担当の人間が突然消えてしまったり、新聞記者の車に何か細工をされて車が暴走させられたりします。

    この新聞記者に扮するエリオット・グールドが敏腕そうに見えないところが実に面白く、丈夫なだけが取り柄という感じなので、凄まじい車の暴走シーンの果てに川に突っ込んで助かってもご都合主義という気がしないのも、エリオット・グールドの個性をうまく活かしたピーター・ハイアムズ監督の職人技の演出が光ります。

    その後、実際は無人のカプリコン1号が帰還中に爆発してしまいます。
    命の危険を感じた三人の宇宙飛行士は、まやかしの火星からジェット機を奪って脱走しますが、燃料不足で砂漠に不時着し、別々に徒歩で逃げる事になります。
    サム・ウォーターストン扮する宇宙飛行士がヘリコプターの追っ手に捕まるシーンは悲しくておかしくもあり、実に味わい深いシーンです。

    エリオット・グールドの方は編集長に反対されながらも、ようやく秘密を探り出します。
    編集長とのやりとりもウイットに富んでいますが、ある人物の協力で新聞記者が宇宙飛行士を助けるクライマックスのシーンは、本当にクライマックスらしい爽快さを感じさせてくれ、大いにカタルシスを味わう事が出来ました。

    曲者俳優のテリー・サヴァラスが、新聞記者に協力する”もうけ役”で出演しているところも思わずニヤリとさせられました。

    三人の宇宙飛行士の中で最後まで残るのはジェームズ・ブローリン扮する一人だけですが、後の二人の宇宙飛行士やコンピューター担当の人間がどうなったのか、最後まで説明していないところも何か不気味で薄気味悪さが残ります。

    つまりこの映画は、国家的陰謀に巻き込まれた三人の宇宙飛行士の失踪の謎、事件の真相を追求する敏腕新聞記者の活躍を軸に、国家の威信の為には犠牲をも止むなしとする非情で冷酷な権力機構の恐怖を大胆な着想で描いていますが、頭脳明晰な科学者達の秘密工作を、もさっとした冴えない新聞記者が切り崩していくという皮肉さが、この映画を一級の娯楽映画に仕立てているのだと思います。

    • タク タク より:

      オーウェンさん、こんにちは。『カプリコン1』への丁寧な論考をありがとうございました。オルカも見ましたが、二本立てだったのは覚えていませんでした。やはり、今見ても時代をこえた傑作の一本ですね。

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