アイルランド・アラン諸島滞在がぼくにくれたもの
ぼくは「イニシェリン島の精霊」のロケ地となった、アイルランドのアラン諸島、イニシュモア島にかつて旅で訪れ、滞在したことがあります。
ケルトの島としても有名です。
1999年と古い旅ですが、皆さんの『イニシェリン島の精霊』理解の足しになると思いますので、ここにイニシュモア島の印象を書いておこうと思います。
当時、ぼくは、アイルランドを家族を連れてバックパッカーで旅していました。その旅の最終目的地が『イニシェリン島の精霊』のロケ地となった、アラン諸島のイニシュモア島でした。
厳しい海に向かって暮らす人々の文化は、アイルランド本土とはまた一味違った文化で、アラン諸島について書かれた様々な本が出ています。
脇道にそれますが、ジョン・M・シングの『アラン島』は名著です。古い本ですが、アラン諸島のことを詳しく知りたければ、おすすめです。ぼくの旅の時もジョン・M・シング『アラン島』がリュックに入っていました。
本の中に書かれているアラン諸島の人々の暮らしは、「厳しい」のひとこと。
1999年、まだ若かったぼくは、そんなアイルランド・アラン諸島に存在する辺境異文化を、実際に肌で感じてみたかったのです。
ぼくのアラン諸島ステイは、諸島の中でも一番大きな島「イニシュモア島」の小さな旅籠に数日間の滞在でした。
しかし出会う島の人々は、初めてあったにもかかわらず以前から知っているような、そんな濃い空気感がありました。
島は、映画でも描かれるように、岩クレだらけで荒涼としていました。
いつも強風が吹いていて、村にパブが一軒。宿屋がポツン。お飾りなど何もない島でした。
パードリックやコルムが歩いてきて「やあ」と声をかけそうな、そんな感じ。
ぼく自身のイニシュモア島での滞在体験は、他の国や地方では得ることができなかった感覚をぼくにくれました。
それは何か?
「荒涼とした空気が放ちうる美しさ」でした。
ちなみに皆さん、「アランセーター」って聞いたことあると思います。網目模様の綺麗な、分厚いセーターです。
それ、アラン諸島名産品です。(ぼくが泊まった宿では、おかみさんがアランセーターを手編みしていました。)
アラン諸島の漁師たちが万が一海で遭難し遺体が浜に打ち上げられても、どの家の人間かわかるよう家の文様を編み込んだ。。。と言われています。
アランセーターの由来がどこまで本当かはわかりませんが、少なくともそんな由来が囁かれるほどにアラン諸島は人間が暮らすに厳しい環境なのです。
逆にいうと、厳しいからこそ、パブでの交流は島民にとって大きな楽しみの一つであり、パードリックやコルムは毎日パブに通うのです。
現地に行くとパブのありがたさが本当によくわかります。
ぼく自身、アラン諸島滞在中、昼はパブでご飯を食べて、夜はアイリッシュ音楽のライブを聞きにまたパブへ繰り出していました。←これ、ほぼ、パードリックやコルムがやっていたことです。
また、映画の中で、断崖絶壁が出てきます。(ネタバレ=妹が船から振り返ると断崖の上にパードリックが立っているシーンのあの崖です。)
イニシュモア島は、片側半分が、精霊巨人が大ナタでズバッと断ち落としたような断崖が、延々続きます。
そこは「モハーの断崖」といいます。
高さにして海面まで50メートルほどはあります。高所恐怖症のぼくは、崖のヘリまで立ったままちかずけず、這っていきました。
まさに「断絶」を象徴する光景です。
この島をロケ地として選んだ理由は、そんな崖の様子にもあるように思えます。
映画の伝えたかったことの一つに「自らが選ぶ道のためには、大地を切り落としたモハーの断崖のように、人生でも断ち落とさなければならないものがある…」というメッセージがある、と、ぼくは感じています。
監督は、そんなメッセージを象徴化したかったから、イニシュモア島の断ち落とされた崖を登場させたのではないかと、ぼくは感じています。
つらつらとイニシュモア島での印象を書きましたが、過去、現地に旅していたことで『イニシェリン島の精霊』がイニシュモア島を脚本のベースにした理由が、ぼくにはよくわかりました。
『イニシェリン島の精霊』と絵本『あしたのまちはどんなまち?』
映画とは関係ありませんが、ぼくは、そんな自身のアラン諸島への旅を一冊の絵本にまとめています。
タイトルは『あしたのまちはどんなまち?』です。
ぼく自身のサイトでご覧いただけますので、アラン島の風を感じたい方は、よかったら覗いてみてください。(残念ながら絶版)
『イニシェリン島の精霊』サブスク配信は?
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コメント
ロバの出てくる映画に駄作無しです(個人の感想です)
いい視点ですね!