映画『オットーという男』は、一人のガンコな初老の男性オットーと彼を取り巻く人々のヒューマンドラマ。主演は、トム・ハンクス。実はリメイク作品です。
元となった映画は、『幸せなひとりぼっち』というスウェーデン映画。こちらの映画はムービーダイアリーズでも取り上げています。
愛する妻に先立たれた63歳の男、オットーは妻の後を追いたく、自殺を図ります。が、なぜかことごとく邪魔が入り、死ぬことができない…。
シリアスだけどコミカルな、『オットーという男』。映画賞もゲットし評判高い『幸せなひとりぼっち』のリメイク作品ははたして面白い?
あらすじを簡単に紹介しつつ、レビューしてみます。
『オットーという男』あらすじは?
主人公は定年退職したばかりの初老の男、オットー(トム・ハンクス)。
とにかくオットーはいつも不機嫌だ。
店で買い物をしても、店員に細かなことでケチをつけ、町内会でも住人のゴミの捨て方に文句たらたら。周りのこと全てがオットーは気に食わない。
彼は愛する妻に先立たれ、生きる意味はない、と、後追い自殺を決意する。
そんな時、家の向かいに、幼い子連れの家族、マリソルとトミー、そして子供たちが引っ越してくる。
自殺をしようと手はず整えるオットーだが、なぜかいつも自殺を図るタイミングで、マリソルが訪ねてくる。
マリソルをけんもほろろにあしらうオットーだが、彼女はそんなオットーをものともしない。
ある日、マリソルはオットーに「運転を教えてほしい」と願い出る。
はじめは断固と断っていたオットーだったが、ふとしたはずみで教えることになる。
その日を境に、少しずつオットーの心に変化が現れる。
オットーが頑なに世間を嫌い、全てを否定する理由もまた明かされてゆく。
それは最愛の妻との日々を、ある日突然遮った、とある事故が原因だった。
オットーの過去とマリソル一家、そして古くから確執のある近所の住人たちのドラマが、絡み合っていく…。
ある日、持病の心臓病の発作で倒れてしまうオットー。
物語は思わぬ方向へと進んでいく…
…と、そんなあらすじです。
コメディといっても良い脚本ですが、お笑いで終らないヒューマンドラマです。
『オットーという男』ぼくの感想です。
トム・ハンクス、偏屈爺さんを演じる
トム・ハンクス演じる初老の男オットーの「苦虫噛み潰した表情」は一見の価値ありだと思います。
トム・ハンクスはどちらかというと善人役やハートウォームな役柄が多い印象です。ところがこの映画では、ひたすらケチつけまくりのキャラです。
そんな意味ではトム・ハンクスはこの役回りをとっても楽しんで演じたように感じます。
そんなオットーを観客はどう見るか?ですが、世代と性別によって別れるんじゃないかな、と、思いました。
『オットーという男』還暦オーバーの男性には、イタイ映画?
オットーが口を開くと文句たらたらの前半は、オットーと同世代、還暦オーバーの男性は、身につまされるところがあるんじゃないでしょうか?
ぼくの実年齢は、オットーの設定年齢(63歳)より二つほど若いです。
ですけど、オットーの周りへの不平のこぼし方が、全てとは言わないまでも、心情的にわかるんですね。たぶんこれは歳のせい。
数年前なら、わからなかったと思う。
男って、社会的に、暗に「君はもう歳だから、お疲れさまー」という年齢になった途端、孤独になっちゃう生き物なんですね。多分そこ、女性とは違うんじゃないのかな?
若い男子が『オットーという男』を観ても、「うざいジーサンだなー」くらいに軽くいなしてコメディとして楽しめると思うけど、アッパー60の元男子は、この映画、痛いですよ、響きますよ、たぶん。
『オットーという男』誰もが心にもつ二つのお面
そして、オットーとは真逆なキャラの若夫婦マリソルとトミーの、オットーの不機嫌に対するほとんど神の対応。これまた観る人に「自分ならどう反応する??」と、問いを突きつけます。
そんなオットーとマリソル・トミー夫婦は、性格真逆な別キャラに見えますけど、人間誰もが心の奥にその二つの面を隠しながらも持っていると思います。
ぼくは、『オットーという男』ではそんな一人の人間が持つ二面キャラクターを、二人の登場人物に当てはめることによって、わかりやすくみせているなあ、と、思いました。
『オットーという男』ぼくの評価は?
トム・ハンクスの演技は良かったし、マリソルもいい味を出しています。
ストーリー自体、評価の高い映画のリメイクですから、そこそこ悪くありません。
しかし、正直、「うーん、、、」だったのです。
リメイクの元となった『幸せなひとりぼっち』とどうしても比べてしまい、『オットーという男』に高得点はちょっと点数は厳しかった。
ギリギリ出して60点というところ。
リメイクの意義
まずもって、映画のリメイク作品って、時代が一区切り変わったあとに作られるから意義あるものだとぼくは思うのです。
または、文化が違うところでつくられるから、意味がある。(たとえば日本の黒沢明作品をフランスでフランス映画人がリメイクするとか。文化違えば・おのずと解釈が違ってくるので)
ところが元の映画と『オットーという男』は、制作国は違えど、同じ西欧文化圏です。おまけに公開の間隔はほんの数年の間しかありません。
それなのになぜ、アメリカハリウッドでリメイクしたのか?
脚本も、あらすじも、ちょこちょこっと軽くいじった程度、と、ぼくは感じました。
新たに映画をリメイク制作した意義が、正直、ぼくにはわからなかったです。
ネタバレあり評価
確かに、『幸せなひとりぼっち』とは違うシチュエーションも加えられてはいます。
(以下、ネタバレになります)
それは、オットーがとった、ある行いがスマホで撮られ、「SNS」で「ヒロイックな行為」として拡散されたり、一匹のネコが狂言回しのように出てきたり。
確かにSNSが筋の展開に使われる映画も昨今多いです。
しかし、ぼくは、どちらも、イマドキのウケ狙いとしか思えなかった。
ぼくにはSNSエピソードやネコ登場は、どうしても、蛇足であり、そして強引な辻褄合わせツールとしか思えませんでした。
さらに、オットーと取り巻く人々が、『オットーという男』後半で「イイカンジ」になっていく過程も、登場人物がセリフで「言い訳解説」に任せてしまうところで興醒めです。
ある脇役が現れ、「ここからワタシの過去を説明します」的セリフが出てきたシーンには、一瞬で気持ちが冷めてしまいました。
ドラマの流れを説明したいのはわかるんだけれど、マリソルとトミー以外の脇役の存在感が、弱すぎました。
ぼくは、オットーがとりまく人々との関わりをもう少し深く見たかった。
そして、受け入れられていく流れを、もっとじっくりと見せてほしかったのです。
最後に一つだけ、つまらないことですが思ったことを書いておしまいにします。
「オットーを、o T T o とパソコンに打ち込むと、「泣き」の絵文字=オットーの心になっちゃうよ、、、いいかも!….もしかして主人公のネーミング、そこまで深読みしてつけたタイトルなのかな??」
脚本はまさかそこまで考えていないと思うし、ぼくがそう思ったのは思い過ごしですね、きっと。
以上、ぼくの個人的レビューでした。
元となった映画『幸せなひとりぼっち』は、こちらでレビューしています。良かったらどうぞ。
『オットーという男』配信先です
配信サービス | 配信状況 | 無料期間と料金 | |
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レンタル | 初回30日間無料 500円(税込) | ||
レンタル | 初回31日間無料 2,189円(税込) |
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