フライヤビジュアルがなかなかツボに入って、つい観てしまいました、『ラン・ハイド・ファイト』。
その昔レコードの「ジャケ買い」ってあったけど、久しぶりのジャケ観。
ストーリーは、主人公の女の子が通う高校が武装した同級生に占拠、銃乱射のシリアスな中、主人公が立ち向かう、、、と、アリそうなお話です。
ところが、なんの、結構のめって観てしまいました。そんな『ラン・ハイド・ファイト』をレビューします。
アマプラ、U-NEXT、RakutenTVで配信されています。
『ラン・ハイド・ファイト』予告編
『ラン・ハイド・ファイト』解説
武装した学生が高校を占拠。ひとり立ち向かうのは、軍人の父親仕込みのサバイバルテクニックを持った女子高生だった…
アメリカを騒がせている銃乱射事件をヒントにしている作品です。
監督はカイル・ランキン。
主演は、Netflixドラマ「アレクサ&ケイティ」のイザベル・メイ。父親役を「ミスト」のトーマス・ジェーンが演じています。
『ラン・ハイド・ファイト』の意味
最初に「ラン・ハイド・ファイト」の本来の意味を書いておきます。
「ラン・ハイド・ファイト」とは、アメリカの国務省がテロ対策として掲げているものなんですね。
以下、公安調査庁のサイトからアメリカ国務省の「ラン・ハイド・ファイト」についての言及です。
そこにはテロにあった時、至極ハッキリとやるべきことが書かれていて、アメリカのテロへの姿勢がわかりますし、映画の理解の助けになります。
なので、丸ごと転載しておきます。
自らの命を守るために最善の方法を即座に決意しなければならないが、「ラン・ハイド・ファイト」の対処法がある。
(ア) 逃げる
忠誠を表明するシリアのISILメンバー(2022年12月2日ISIL発出)
米国国土安全保障省がYouTube上で公開した「ラン・ハイド・ファイト」に関する啓発動画の一場面(2017年8月1日)(出典: https://www.youtube.com/watch?v=pY-CSX4NPtg )逃げ道がある場合には、その場からの脱出を試みる。その際には、以下の点を確実なものとしておく。
○ 脱出のルート及び計画が頭にある。
○ 他者が後続するか否かにかかわらず、脱出する。
○ 身の回り品は持たない。
○ 可能であれば、他者の脱出を助ける。
○ 犯人がいると思われる場所に行こうとする者を阻止する。
○ 手元を隠さない。
○ 警察官の指示に従う。
○ 負傷者を動かそうとしない。
○ 安全な場合には911(注6) に電話を掛ける。
(イ) 隠れる
脱出が無理な場合には、犯人に見付かりにくそうな場所を探し、隠れる。その際には、以下の点に注意する。○ 犯人の視界に入らない場所に隠れる。
○ 銃弾が飛んでくる場合に備え、盾となるものを探す。
○ 自らの行動や動作が制限されない場所に隠れる。
○ 隠れる場所に犯人が侵入してくることを防ぐため、ドアをロックし、バリケードを築く。
○ 犯人が近くにいる場合には、ドアをロックし、携帯電話をサイレントモードにし、ラジオやテレビの電源を切り、物陰で身を潜める。
○ 脱出も隠れることもできない場合には、まず落ち着き、可能であれば、911に電話を掛けて犯人の所在を警察に通報し、電話での会話が難しいのであれば、電話を切らず、通信指令係に聞こえるようにする。
(ウ) 戦う
逃げることも隠れることもできず、命の危険が差し迫っているときには、最後の手段として、以下の手法で犯人を混乱させ、又は動きを封じることを試みる。○ 可能な限り果敢に行動する。
○ 物や即席の武器となる物を投げ付ける。
○ 大声を上げる。
○ 全力で戦う。
『ラン・ハイド・ファイト』あらすじは?
17歳の女子高生ゾーイ(イザベル・メイ)は、幼い頃から軍人の父(トーマス・ジェーン)にサバイバル術を学び、父から狩りを教えてもらっていた。
しかし母の死をきっかけに、父娘の関係に溝ができてしまう。
そんなある日、彼女が通う学校、ヴァーノン・セントラル高校のランチタイム、カフェテリアに、一台のバンが突入、武装した高校生トリスタンとその仲間がマシンガン、ショットガンでカフェテリアにいた高校生を次々と射殺。制圧する。
ゾーイの男友達ルイスは、偶然その場に居合わせ、犯人たちからスマホでSNS実況を強要させられる。
次々とSNS実況へのアクセス数が上がるのは、トリスタンの目論みだった。SNSはあっという間に制圧の様子とトリスタンたちを世間に広める。
運良く別の場所にいたゾーイは、校舎の外へ脱出することに成功する。
一度は校舎外へと出たゾーイだったが、校内に残った友人たちを救うため、舞い戻る。
武器となるのは、知恵と自分を奮い立たせる勇気だけ。
ゾーイは次々と襲いかかる危機を満身創痍で乗り越え、ゾーイはついにトリスタンに立ち向かう。
『ラン・ハイド・ファイト』の感想は?
『ラン・ハイド・ファイト』、いい意味で裏切られました!ヨイです!
最初は確かにジャケ買いでした。
どう見ても、チラシはダイハードみたいなド派手アクション系でしょう?
ところがですよ、コレがクセモノ食わせもの。
こんなガールズヒーロー、もといヒロイン、はじめてかも!と思わせる、「とある設定」が超ハナマルだったのです。
何がハナマルだったのか?それ、書きます。
ハナマルその1〜全然ヒロイックじゃない女子高生ゾーイ
告知ビジュアルではいかにも「ファイティンガール」のイメージですが、劇中のゾーイはぜんぜん強くない。
むしろ、前半、マジの泣きべそ。後半も痛いものは痛いんだーと、半泣きでびっこ引き引き。
主役の、人間の持つ弱さ丸出し感ハンパなし、がハナマルなのでした。
決してヒロイックじゃない、でも、一生懸命やることやります!という感じ。それが最後までドラマを引っ張ります。
ハナマルその2〜確かにゾーイ、銃の腕は立つ
冒頭オープニングの滑り出しは主人公が父親に狩猟ライフルの手ほどきを受けているシーンからスタートです。
そのシーン数分で「彼女の銃の腕前はいいんだな。親父も多分歴戦のツワモノだったに違いない」と思わせます。これ、うまいです。
で、そんなオープニングですから、さぞや彼女は武装集団とドンパチするんだろうな…と思うでしょう?
ところが、彼女、ネタバレになっちゃうから映画見たい人はスルーして欲しいけど、、、
↓
劇中撃つのは、たったの2発!
そのうち1発は、ピストルを持った敵(女子高生)と格闘中に、間違いなく自己防衛で相手を撃っているだけ。
なので自主的に撃ってない。
ということで、1発はスコアから除外です。
2発目は超ネタバレになりすぎるので、どういうシーンで撃つのかは伏せます。
ですが、とにもかくにも、彼女は、告知ビジュアルイメージのようにバラバラ撃ちません!
そう、「撃たない女子高生ヒロイン」にハナマル!なのでした。
ハナマルその3〜思春期の娘と父
ハナマルその3は、主人公と父親の関係がよいのです。
主人公の女の子の年頃によくあるように、『ラン・ハイド・ファイト』の娘と父は超ギクシャクしてます。
映画が始まって間もなくの朝食シーンでは、「いつまでも母親亡くなったこと、クヨクヨしてんじゃない」と正論かざす父に、ブスっと言葉返す娘。
うん、うん、わかります。
でも、娘は父の軍人時代のパーカーを着ている。
コレは母が亡くなるまでは、ホントに父親と仲が良かったし、今はブスッとしてるけど、今も娘は父を好きなのですね。
筆者も娘を持つ父親ですけど、この親子の関係、超わかります。この映画、父娘関係をベタベタ扱わず、行間に滲ませてるところがいいな、と思いました。。
そんな父が、ドラマの後半、娘を助けるためにできるギリギリのあることをするんです(ネタバレになるので伏せます)が、それも同じ男親としてわかるよ〜〜と、父娘の関係がとてもハナマルです。
ゾーイと母親についての考察
ちなみに主人公女子高生の母親が登場します。
察するに、母親はどうやら病気(多分、癌)で死んだばかりです。
娘はその母の幻影と対話するシーンが何度も登場します。
その対話シーンをどう見るか?についてぼくの考察を書いておきます。
その一連のシーンは、娘自身の心の中での、もう一人の自分との対話なのだと思います。
超絶に困った時、人は自分の中のもう一人の自分と対話してますよね。
「困った、どうしたらいいだろう?」
「困ってたって解決にならないだろ?とにかく動けよ」
「動くって言ったって、どう動けばいいんだよ?」
「とにかく走ればいいんだ!」
…みたいな自分自身との対話、って、ありませんか?
母親が唐突に映画に登場するのは、決してユーレイや幻影でもなく、
「こんな状況で、お母さんならどうする?」
という心の対話を、監督は『母を登場させて、もう一人の自分を母と置き換えて映像化した』んだとぼくは思いました。
そう考えると、うまくひねった演出だと思います。
主人公の名前「ゾーイ」の意味
ゾーイという名前は、実はとっても象徴的な意味を持っているんです。
古い映画にギャング映画の佳作(だとぼくは思っている)「キリング・ゾーイ」という映画がありました。めちゃくちゃにド派手なギャング映画でした。その映画のタイトルにもゾーイが使われています。
映画じゃないですけど、ロックミュージシャン佐野元春のアルバムタイトルにも『ゾーイ』が使われています。
そんなゾーイの語源は、実はギリシャ語です。「ZOE(ゾーエー)=いのち」なんですね。
主人公の名前が、映画で描かれる殺戮とは真逆の「命」「生きるもの」「生命体」という意味を持っているんですね。
この名前の意味を知ると、なんだか監督が脚本に込めた想いが伝わってくるように思えます。
リスペクトひけらかしの『ラン・ハイド・ファイト』
この映画の監督さんは、若いです。だから、色んな映画から影響受けてるのがいくつかのシーンからわかって楽しめます。
冒頭の父親から狩猟の指南を受けるシーンは『スターリングラード』。
エンディングの真俯瞰ドローン撮影エンディングカットは『フューリー』。
そして、内容自体はアクション映画のもはや古典と言ってもイイ傑作、ジョン・マクティアナン監督&ブルース・ウィリス主演の『ダイハード』です。
多分、監督は小学生くらいの時にダイハードで映画にハマって、映画街道まっしぐらに進み監督になったんじゃないかな。
映画の先人へのラブさえ感じて微笑ましくなりました。
そういう20世紀作品で育った21世紀の若手監督が増えてきましたよね。
そんな若手監督の作品見ていて「ネタパクリじゃんか!」と、冷めてしまうか、この『ラン・ハイド・ファイト』みたいに「ああ、あの映画が好きで、自分の演出でやりたかったんだね〜」と、親心くすぐられ微笑ましくなるか…って、実は、分かれ道は微妙なとこなんですよね。
どこで別れるんだろう?不思議だ。
とにかくですよ、この映画、多分にめちゃくちゃ低予算で作られていると思います。
でもね、「カネないからこんなもんでいいや」っていう姿勢がまったく見えません。
監督と役者さんたちが、超ホットなハートでキメています。
ぼくの分かれ道は、作り手を応援したくなるかどうか?たぶん、そんなところのような気がします。
『ラン・ハイド・ファイト』評価
なんだか、いい映画を拾い上げた…って、上から目線のおおいに失礼ですね…。
なので、いい直します。
思いがけずいい映画に出会った気分です。
『ラン・ハイド・ファイト』ぼくの評価は四つ星🌟🌟🌟🌟です。
『ラン・ハイド・ファイト』配信先・レンタル先は?
以下のサービスで配信、レンタルされています
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