ネタバレレビュー『最後の乗客』評価~あらすじ感想考察・深読み解説|キャスト・エンドロールの謎・試写会レポまで

ヒューマン・ハートフル

2023年・春『最後の乗客』試写会ルポ

観る前にぼくはこう思った

「『最後の乗客』という映画の完成試写会があります。一緒に行きませんか?」

2023年春、『最後の乗客』を仙台試写会で見るきっかけとなったのは、友人からのそんな一本のメールがきっかけでした。配給先は決まっていないということでした。

聞けば、監督の堀江貴氏は、ぼくが暮らす宮城県仙台出身。今はニューヨーク在住。

メールをくれた友人の旧友が、アメリカに住んでおり、ニューヨークで監督と知り合いその映画のサポートをしているとのこと。

「もちろん!」と返事を打ち、仙台のとあるホールでの試写会にでかけました。

東日本大震災の「その後」を題材にとりあげた作品ですが、ドキュメンタリーではありません。

この映画で描かれる柱は、誰でもが経験している「親子の関係」、そして「亡くなった愛する人と残された人の関係」です。

震災から12年目の311日。その日を完成試写の日にすべく、制作が進められたといいいます。



『最後の乗客』震災と映画

12年の歳月は流れたとはいえ、フィクション映画『最後の乗客』でどのように震災が語られるのか?が、ぼくは興味ありました。

『最後の乗客』が仙台でロケがされたこともあってか、試写会が行われた小さなホールは満員でした。

監督もニューヨークから、俳優も東京から駆けつけていました。

『最後の乗客』上映実行委員会関係者からあいさつがあり、そして試写が始まりました。

良質短編の読後感

『最後の乗客』は夜中に拾った一人の女性客とドライバーの関係が物語の核になっています。

その女性役は、AKB48の元メンバー岩田華怜(宮城出身)です。他の登場人物は、わずかに5人。

それぞれの関係が「えっ?そういうこと??」という意外な展開とともに語られていきます

語られるといっても、饒舌ではありません。

余計な説明は一切省かれて、行間が語ってくれる映画です。

しかし、『最後の乗客』というタイトルが、非常に意味深です。

ネタバレになりますが、タクシーには合計三人の乗客が乗り込みます。果たして「最後の乗客」とは一体いつの最後だったのか、そして「最後の乗客」は誰だったのか??

観客に問いを残す映画でした。

ぼくは、エンドロールの後、良質な短編を読み終わったような感覚を持ちました。

映画のもつ「語りかける力」というものを久々に感じました。




2023年・春『最後の乗客』試写会〜堀江監督の言葉

写真は試写会舞台挨拶の様子です。写真右から冨家ノリマサさん・岩田華怜さん・堀江貴監督・子役さんと長尾純子さん。

映画試写が終わり、舞台挨拶で俳優さんと監督が壇上に上がりました。

そこで堀江監督がこんなことを言いました。

「震災があった時、ぼくはニューヨークにいました。被災地に支援にいけなかったから、できることをしなければと、ニューヨークでドネーション活動をしていました。」

「ある時、一人の若い女性の日本人と会ったんです。彼女はぼくにこう言いました。『チャリティするのが当たり前という空気が、実は辛かった』と。」

「その時、わかりました。震災の感じ方、震災が与えたダメージは、人それぞれ全く違うんだ、と。同時に、そのことが分かったようでわかっていなかった自分を恥じました」

「この映画『最後の乗客』を撮ろうと思った時、大切にしたかったのは、そういうことです。」

そんな監督の舞台挨拶で、ぼくが『最後の乗客』のストーリーに漠然と感じていた、ある感覚が、ハッキリと像を結びました。

それは、被災者それぞれが持つ経験の連なり(歴史といってもいい)と、心の多様性です。

『最後の乗客』は一方的に震災の悲劇を押し付ける映画ではありませんでした。

被災で心を痛めた人々や、愛するものを失った人々はたくさんいます。

その人たち全てにできる限り寄り添おう、、、というパワーがこの映画にはあるように思えました。



2023年・春『最後の乗客』試写会〜岩田華怜さんのこと

『最後の乗客』ではAKB48の元メンバー岩田華怜(いわた かれん)さんがドライバーの娘みずきの役で、素晴らしい演技を見せてくれています。

岩田さんは宮城県出身です。舞台挨拶でも、タレント時代にスポットライトを浴び続けていたせいでしょうか、オーラがありました。

もともと地元仙台では子どもタレントが芸能活動のスタートだったとのこと。AKB48オーディションに合格直後に、実家のある仙台で東日本大震災を体験しています。

そのことを考えると、この映画への出演は必然だったのでしょう。

どんな映画に出ていたんだろうとウィキを調べましたところ、この映画と同じく宮城県を舞台にした時代劇『殿、利息でござる』にも出演していました。『殿、利息でござる』はぼくも見ました。面白い映画でした。が、恥ずかしながら岩田華怜さんだったとは気がつかなかった。。。ごめんなさい。



2023年・春『最後の乗客』試写会〜冨家ノリマサさんのこと

『最後の乗客』の試写会が終わりホールを出る時、監督と俳優さんが、ぼくらを見送ってくれました。皆さんは暖かな空気をまとっていましたが、中でも印象に強く残ったのが、主人公のドライバー役を演じた冨家ノリマサ(ふけ のりまさ)さん。

Wikipediaを調べたら、テレビドラマでは「おしん」や「ひらり」、「水戸黄門」シリーズや「大岡越前」シリーズ、映画では「エトロフ遙かなり」「ストックホルムの密使」をはじめとして、それはすごい本数のドラマに出演しています。プロ中のプロですね。キャリアが長い役者さんです。Wikipediaの冨家さんのページを貼っておきます。

舞台挨拶でも、「震災をテーマにした映画に出るという事実を重く考えて引き受けた」とおっしゃっていました。

会場から出る時にありがたくも冨家ノリマサさんと二言三言、言葉を交わし握手することができました。

その時の冨家さんの綺麗な瞳、そして笑顔が不思議と心に刻まれました。目が語る役者さんですね。

この映画、上映の機会が増えて欲しいので、以下に公式サイトをアップしておきます。https://lastpassenger.net/#2021

(以上は2023年3月現在での記事です。2024年10月から全国公開となりました)

今、冨家ノリマサさんの出演した『侍タイムスリッパー』も単館公開から全国公開へと広がり、『最後の乗客』と同じように高評価が広まっています。

二つの映画に冨家ノリマサさんが果たした役割は大きいはず、と、冨家さんの握手と目を思い出しています。



堀江貴監督へのインタビューが『Newsweek』日本版で掲載

『Newsweek』日本版で堀江貴監督インタビューが掲載されていますので、ご覧ください。

堀江貴監督の今に至るまでのことや、岩田華怜さん出演のいきさつ、劇中で重要な小道具として登場する「おにぎり」についても語っています。

https://www.newsweekjapan.jp/worldvoice/bailey/2024/01/post-65.php


『最後の乗客』映画祭での受賞・ノミネート歴

世界中の映画祭で18の賞を受賞しています。

以下にノミネート並びに受賞データを一部ですが記載しておきます。

・サンディエゴ芸術映画祭:「最優秀インデペンデント映画賞」受賞

・モントリオール・インデペンデント映画祭:「最優秀フィクション映画」

・カンヌ世界映画祭:「最優秀インディペンデント映画/低予算部門」ファイナリスト

・ボーデン・インターナショナル映画祭:「初長編映画」ノミネート

他、ノミネート多数となっています。

追記『最後の乗客』映画のキーになる震災と幽霊

被災地での幽霊話は多いと聞きます。

これまでに何度か新聞だったか雑誌だったかの記事で、海岸方面を流しているタクシードライバーの幽霊話を読んだことがあります。

ちなみにいくつかの出版物にもまとめられています。

興味のある方は、「東日本大震災 幽霊 本」でググると出てきます。電子書籍で読めるものもあります。どれも興味本位で描かれたものではないですので、興味のある方はググってみてください。

僕は仙台に住まいがありますので、何度も被災地に行っています。車なら40分も走れば津波でやられた地域にたどり着きます。

が、霊感が弱いせいか一度もそれらしい体験をしたことはありません。






コメント

  1. モスラの息子 より:

    2015年春、ももクロ主演映画『幕が上がる』を観るため、一関から名取まで車で行きました。映画に大満足しての帰り道、とある交差点で、ここを右折したら荒浜に行けるな、行ってみようかな?一瞬そんなことを思い、いや、そんな野次馬根性で行くべきじゃない、と思い直し、行かなかったことがあります。この映画、荒浜近辺で撮影したんですよね?
    震災後、仕事でマスコミの人を乗せて、大船渡まで行きました。ある公民館に、津波に流されて持ち主がわからなくなった写真が並べられていて、沢山の人たちが縁ある写真はないかと探しに来ているのをこの目で見ました。
    仕事柄、被災地には何度も行き来した。あの被災地の光景はいまだに頭から離れない。ここで多くの人が亡くなった。皆さん思い残したことがたくさんあっただろうに…。
    なんかね、この映画でそんなこんなを思い出し、涙が止まらなかった。
    亡くなられた方々も、生きて今を生きる方々も皆さんどうか
    心穏やかでありますように。私にはそれしか言えない。

    • タク タク より:

      モスラの息子さん、こんばんは。
      荒浜行きは、あえて物見遊山で行ったとしても、想い馳せないよりはずっとよいと思いますよ。
      ぼくも様々な震災関係の絵の仕事をしてきましたが、正直、どんな仕事も「楽しんで」はできなかったです。しかし、他の仕事よりエネルギー必要だったのも確かです。
      『最後の乗客』の関係者も同じだったと思います。
      一度、モスラの息子さんの当時の話をお聞きしてみたいですね。

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