『セプテンバー5』実話ネタバレ評価〜報道現場リアリティ重量級
こんにちは!映画好き画家のタクです。今回レビューする映画はサスペンスドラマの『セプテンバー5』(原題:September5)です。(2025年公開/95分/ドイツ・アメリカ合作)
この映画、キューっとくる緊迫感好きな方や、実話系映画に目がない方、プロジェクトXが好きな方には、ダントツおすすめです。
1972年、ミュンヘンオリンピックでパレスチナ武装組織がイスラエル選手団を人質に立てこもりました。
実は「テロ」という言葉は、この時に生まれたんです。劇中でも、そのくだりが出てきます。
そのテロ事件の顛末を、事件を生中継した実在のテレビクルーたちの視点でリアルに映画化したのが『セプテンバー5』です。
第82回ゴールデングローブ賞の作品賞ドラマ部門、第97回アカデミー賞の脚本賞にもノミネートされた、パワフルなおかつ上映時間95分という短めの尺もナイスな映画『セプテンバー5』をレビューします。ネタバレも含まれますので、映画を観たい方は必ず観た後でチェックプリーズです。
解説『セプテンバー5』見どころ考察
ミュンヘンオリンピックのテロ事件は以前スティーブン・スピルバーグ監督が『ミュンヘン』というタイトルで映画を作っていました。
こちらはしかし、「黒い9月』に襲われ殺されたイスラエル選手団の復讐裏話がテーマになっていました。
ミュンヘンオリンピックのシーンも出てきますが、一部分だけです。
『ミュンヘン』での報道現場の描き方もリアルですけど『セプテンバー5』とは、まるっきり視点が違います。
『セプテンバー5』が描き出した95分は、報道の現場のリアリティなんです。
おっと、こう書いてしまうと語弊がありますね。そこで描かれるのは、報道カメラクルーやマイクを向けるリポーターの現場ではありません。
そういった末端情報が集まってくる、BBCスポーツ部報道中枢なのです。
そこには何台ものモニターが配置され、ディレクターが同時進行で入ってくる複数の最新映像を見ながら絶妙な指示を出しています。
…その現場に満ちているのはスタッフの交錯する声、タバコの煙…、そして「アスピリンが足りない」という責任者のつぶやき…。
そんな混沌と緊迫、精密な歯車が入り混じったBBCスポーツ部報道指揮所が物語の舞台となります。
緊迫感あふれた演出、脚本を手がけたのはティム・フェールバウム監督。
出演は「ニュースの天才」のピーター・サースガード、「パスト ライブス 再会」のジョン・マガロ、「ありふれた教室」のレオニー・ベネシュ、他。
ぼく的にはレオニー・ベネシュが要チェックでした。「ありふれた教室」でめちゃくちゃすごい演技をぶっ放して、令和のメリル・ストリープと言っちゃいたい実力派。
正直にいうと、この映画のことチラシで知った時、レオニー・ベネシュが使われてたんで、「これは観なきゃ!」と思ってた次第です。結果、やっぱりよかったですよ、レオニー・ベネシュ。彼女見れただけでも損はなかった!
『セプテンバー5』あらすじは?
1972年9月5日。
ミュンヘンオリンピックの選手村で、パレスチナ武装組織「黒い九月」がイスラエル選手団を人質に立てこもる事件が発生した。
そのテレビ中継を担ったのは、ニュース番組とは無縁であるスポーツ番組の放送クルーたちだった。
エスカレートするテロリストの要求、錯綜する情報、機能しない現地警察。
全世界が固唾を飲んで事件の行方を見守るなか、テロリストが定めた交渉期限は刻一刻と近づき、中継チームは極限状況で選択を迫られる。
以上、映画.comより一部転載
『セプテンバー5』感想評価です
上映時間95分の絶妙さ
この映画の主な登場人物は4人です。BBC放送局の現場を仕切るジェフ、マーヴィン、ルーン、そして通訳スタッフとして雇われている女性のマリアンネです。
まず第一に、彼らのテレビマンとしてのプロ根性とジャーナリストとしての立場と野心、現場判断を、「95分」という絶妙な尺に納めています。この納め方が素晴らしいです。
それぞれの野心、そしてプロフェッショナル魂のぶつかり合い、カラミ合いが見どころになります。カラミ合うと言っても、これ、実話ですから、たぶん話のスジでウソはついていないと思います。そう考えると、「事実は小説よりも奇なり」とはまさに、です。
オリンピック報道ですから、現場に一番近いのは「スポーツ部」なんですよね。当然、BBCのニュース報道部が「ウチに任せろ!」と電話で言ってきます。
「うっせえ!事件は現場で起こってるんだ!」とばかりに、電話を無視して主導権を渡さないスポーツ部が最後まで報道するのです。
報道部とスポーツ部の絡みだけでもドラマになりそうなのに、そんななんぼでも長くできる内容をあえて「95分」にスパッと収めたことで、ドラマが持つ緊迫感がずっとずっと増しているとぼくは感じました。
熱い現場を切り取る冷めた目線
この映画は、ある意味、冷めた目線が良いです。
『情報錯綜する切った張ったの現場』を描いているにも関わらず、かっこいい誰かを作り上げていません。かろうじて、紅一点的マリアンネ(レオニー・ベネシュ)にそんなスポットが当たってるくらいですが、それでも冷静なるスポットです。
あえて、報道現場のヒロイックな輝きを消去しているように、ぼくは感じました。
あ、これ、褒めてますよ。
当時はいまと違って、世界揃ってイケイケの時代でした。もし、仮に、1970年代当時にこの映画が作られていたならば、ヒーローヒロイン大活躍ムービーになっていたに違いありません。
でも、そんなことを『セプテンバー5』では、いっさいしていない。
1972年が、制作陣にとって「乾いた過去」になったからこそ冷徹に、ドライに描くことができたんだと思います。
意味深オープンエンディング
ラストが開放型のエンディングになっているのも、ぼくは好きです。
過ちを犯してしまったジェフが、ひとり車に乗り込む…しかしそれ以外に何も語らない…そして続くエンドロール。
スタッフロールが流れる中、ぼくはこう考えていました。
「彼らはこのあとどういう人生を歩んだんだろう?」
問いの詰まったボールがスクリーンの向こうからポーンと投げられたようで、たまらなく良かったです。
『セプテンバー5』ぼくの評価は?
『セプテンバー5』は、報道の自由とは?からはじまり、臨機応変とは?人権とは?責任所在とは?まで、報道の現場に問いを投げかけています。
また、1970年からの連なりである「今」にもダイレクトに通じる様々な問いを、ズバッと突きつけていました。
観る人それぞれが何らかの問いを受け取る映画だと思います。
なので言っちゃいます。老いも若きも、男性も女性も必見です。
さすがに家族向けとはいえないですけど。。。
ぼくの『セプテンバー5』への評価は、星四つ半🌟🌟🌟🌟✨です。
たぶん、歴史に残る映画になるに違いない、、、と、ぼくは思っています。
『セプテンバー5』スタッフ・キャスト
スタッフ
監督
ティム・フェールバウム
脚本
モリッツ・ビンダー
ティム・フェールバウム
アレックス・デビッド
撮影
マルクス・フェルデナー
美術
ジュリアン・R・ワグナー
衣装
レオニー・ザイカン
編集
ハンスエルク・バイスブリッヒ
音楽
ロレンツ・ダンゲル
キャスト
ルーン・アーレッジ:ピーター・サースガード
ジェフリー・メイソン:ジョン・マガロ
マーヴィン・ベイダー:ベン・チャップリン
マリアンネ・ゲブハルト:レオニー・ベネシュ
他
以上スタッフ・キャスト情報は映画.comより一部転載。
『セプテンバー5』配信先
U-NEXT | 初回31日間 無料 | |
RakutenTV | 無料 | |
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『セプテンバー5』トレイラー

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