観ました『イエスタディ』評価と感想|映画のあらすじネタバレ・見どころまで

ハッピー・ラブ・コメディ

♩♩映画レビュー・『イエスタディ』星三つ半⭐️⭐️⭐️✨♩♩

『売れないミュージシャンが目が覚めたら、その世界でビートルズを知っているのは彼ただ一人だった…。』

そんなパラレルワールド仕込みのコメディ+ロマンス×ビートルズサウンドムービーが映画『イエスタディ』(2019年英米合作)をレビューしてみます。

監督はダニー・ボイル、出演は主役ジャックにヒメーシュ・パテル。相手役にリリー・ジェームズ。エド・シーランが本人役で出演しているのも話題を呼んでいます。





『イエスタディ』Trailer

『イエスタディ』あらすじは?

ジャックは、英国、サフォークの海辺の町に住む、シンガーソングライターだ。

幼なじみのエリーはマネージャーとして彼を支えている。

しかし、まったく売れない日々。

音楽でブレイクする「いつか」を夢見てやってきたが、チャンスが掴めない。

そろそろ諦める潮時か、と、限界を感じていたそんな時、世界規模な停電が起こり、彼は交通事故に遭う。

昏睡状態から目ざめたジャックは、回復祝いの席で、エリーと友人たちを前にビートルズの「イエスタディ」をつまびき、歌う。

しかし、誰もが知っているはずのその曲を、エリーたちは初めて聞いた顔で感動を伝える。

彼が昏睡から目覚めたその世界には、史上最も有名なバンド、ザ・ビートルズが存在していなかったのだ。

ジャックは、その世界でビートルズの曲を知っている唯一の人間だ。

そのことを知ったジャックはビートルズの曲を書き留めて発表しはじめる。

もちろん瞬く間にジャックの存在は世間に知られていく。

ある日、ジャックの家に一人の男が訪ねてくる。エド・シーランだ。

エドは、海外ツアーの前座をやらないか?と、ジャックに申し出る。

ジャックは引き受けるが、マネージャー役をずっとこなしてきたエリーは、仕事をやめて町から出るわけにはいかない、と、海外随行を断ってくる。

ジャックは仕方なく、べつの悪友にマネージャー役を頼み、エドの海外ツアーに同行する。

ツアーの先はロシア・モスクワだった。

前座ステージングでジャックはビートルズの「バックトゥザUSSR」をプレイし観客から大喝采を浴びる。

エド・シーランは、ジャックの曲のただならなさに驚き、わずかな時間で新曲を書きあげるバトルを持ちかける。

バトルでジャックはピアノでビートルズナンバーを弾き、エドは負けをみずから認め、こういう。

「君がモーツァルトなら、ぼくはサリエリだ。」

エドの音楽マネージャーはジャックを売り込もうと画策、音楽ビジネスがしのぎを削るロスへとジャックを誘う。

サフォークの町ではジャック渡米の祝いの席が持たれ、エリーはジャックに問いかける。

「わたしはマネージャーとしての枠だけなの?」

それはエリーの愛情の問いかけだったが、ジャックは答えることをせずにロスへと旅立つ。

『イエスタディ』あらすじラストまで〜ネタバレ閲覧注意!

ジャックを売り出すプロジェクトがはじまり、ビートルズのナンバーはことごとくヒットしていく。

リバプールへ出かけたジャックをエリーが訪ねる。

ジャックの気持ちを確かめるためだったが、ジャックとエリーはしかし気持ちを確かめ合うことはできずに別れる。

のちにエリーはジャックに電話で恋人ができたことを告げる。

意気消沈のジャック。

そして故郷への凱旋公演の日がやってくる。舞台は、かつて売れなかった日にキャンセルされたいわくつきホテルだ。

そんなジャックの元に二人の男女が訪ねてきて、話がある、という。

ジャックはついにバレてしまったと覚悟を決めるが、そうではなかった。

二人はジャックと同じくビートルズを知っている「残された人」だった。そしてジャックに「ビートルズの偉大さをこの世界で広めてほしい」と頼み、一枚のメモを渡す。

そのメモに書かれた住所までタクシーを飛ばすジャック。

住所の家の扉をノックする。

出てきた男は、なんとジャックが知っていたあの男だった。

奇跡のような男との出会い。

ジャックは奇跡のハグを交わす。

+ + +

ウェンブリースタジアムでのエド・シーランのライブ前座に現れるジャック。

ジャックは、自分自身の人生にケリをつける覚悟を決め、ステージングに立つ…。




『イエスタディ』感想

4つの見どころ

1. **ビートルズの音楽**

映画全体を通して使われているのはビートルズヒットナンバーの数々。それらのメロディと歌詞が持つ普遍的な魅力を再認識しました。

2. **ユーモアと感動のバランス**

コメディ要素が強く、観客を楽しませるシーンが多い一方で、音楽が持つ力やかけがえのないものとしての友情、愛情。そして笑いと切なさのバランスの妙が迫ってきました

3. **主人公の成長物語**

主人公ジャックの悩みや成長が丁寧に描かれており、共感できました。彼の心の葛藤が観る人に深い印象を与えます。

4. **ビジュアルと演出**

ダニー・ボイルらしいトリッキーなカット演出が楽しめました。ぼくは英国映画の空気感が好きなんですが、映像から英国のリアルな空気感が迫ってきました。


ビートルズとダニー・ボイルの合わせ技

以上は当たり障りない見どころでしたが、さて、ここからは直球感想です。

『イエスタディ』を観終わって、最初に思ったのは、「なんと複雑な印象の映画だろう…」という、ハッキリしない感覚でした。

『イエスタディ』のストーリーの設定は面白いです。

世界規模の停電がきっかけで行ったパラレルワールドが「ザ・ビートルズ」が居なかった…。そこで主人公ジャックはビートルズの曲を持ちネタにしてブレイクしていく…。

たしかに「ビートルズ(以下、ザ・を省略します)を聴いたことがない世界中の人に、ビートルズの名曲がどう響くか?」が見せ場になっていますが、そんな切り口に「なるほど!それがあったか!」と、納得でした。

その切り口の新鮮さから、世界中のビートルズファン、映画ファンベタ褒めムービーほぼ間違いなしかと思います。

登場人物の名前もビートルズの曲から拝借しているそうで、音楽にも造詣が深いダニー・ボイル監督のこだわりとのこと。(ぼくはそこまでわからなかったけど)

最強ポップミュージックの神=ビートルズの名曲を、シェイクスピア劇からの叩き上げて来た玄人監督ダニー・ボイルが映画に仕立て上げるなんて、めっちゃくちゃ贅沢すぎるバックボーンでしょう。

ビートルズを知らない人はいなくても、「ダニー・ボイル監督って、誰??」という人ももちろんいるはずです。

が、世界中でテレビを持っている人なら、誰もが一度はボイル監督の演出を目にしていると思います。

それは、ロンドンオリンピックです。

ロンドン五輪開幕セレモニー演出を手がけたのがダニー・ボイル監督なんですね。

映画作品では『トレインスポッティング』や『28日後』、『スラムドッグミリオネア』といった、クセある評価高い作品を撮ってきています。



笑いと切なさと

ダニー・ボイル監督って、イギリス人らしく、ひねりを効かせるのを得意な気がします。

『イエスタディ』も、コメディと切なさをうまくブレンドしている感じが、ぼくは好きでした。

笑えるところでは笑えます。といってもワハハという感じではなく「ニヤッ」という笑いです。

ユーモアの本家英国の監督ですから、やはり笑いは、一瞬間を置いた後の「ニヤッ」でしょう。

コメディといっても底抜けな笑いをくれるアメリカ流コメディとはまた違うんですよね。(ぼくはどちらも好きですが。)

全編、切なさがあるから笑いが引き立つ、みたいな妙味がありました。

「笑いと切なさ持ちつ持たれつ」的魅力が次々とやってくる。それが『イエスタディ』だと思います。

 

だけど…正直いいます。だけど、『イエスタディ』にぼくは、最後、ノリ切れなかった…。

 

嬉しかったビートルズオンパレードだけど…

ぼく自身、ビートルズ世代よりちょっとだけあとの世代として育ちました。でも、リアルタイムではないにせよ、ビートルズの良さ、すごさは充分ハダでわかっているつもりです。

ですので、『イエスタディ』の劇中、ビートルズの名曲が登場するたびに、ニヤニヤしていました。ほんと嬉しかったです。

「ビートルズの歌って、やっぱりすごいや。神がかってる。」と、あらためて思いました。

なのに、なぜ乗り切れなかったのだろう?

この映画の物語のタテ糸は、主人公ジャックの「時限つきサクセスストーリー」です。

そしてヨコ糸は、エリーとの「友達以上恋人未満」の関係という、「ラブストーリー」です。

その二本の糸の絡み具合が、イマイチぼくにはしっくりと来なかったのだと思います。

ご存知ビートルズの名曲には限りがあります。その終わりがいつかくるわけで、さらにジャックは、サクセスへの階段が、自分自身の力ではないことがわかっています。

ジャックのサクセスストーリーの崩壊はわかっていることへのハラハラ感だけでも見ている気持ちが切なくなるのに、エリーとの関係の進展の「超スローモーション」のようなもどかしさにも違った切なさを感じてしまったのです。

切なさ×切なさ=ココロが距離を置いてしまう

という方程式です。

ネタバレになりますので微妙に言葉を選んで書きますが、クライマックス近くに、とある超重要キーマンが登場します。そのキーマンとあったジャックは、クライマックスで、とある決断をします。

その決断も、頭では理解できましたが、ココロが納得できなかったのです。

そしてラスト、ある意味、ハッピーエンドが訪れます。が、ぼくはどうもハッピーに拍手を送ることはできなかったのです。

「脇役のアイツはどうなったんだろう?」

「ジャックに転機を持ってきた彼らは何者だったんだろう?」

「本人役のエド・シーランは、どう思っていたんだろう?」

「ジャックに対して雑な両親は、ただ喜んで終わっただけでいいのか?」

「ビートルズを知らないパラレルワールドの人々は、クライマックスのあと、どう思ったんだろうか?」

などなど、ぼくはココロに張り付いて離れないアレコレがスッキリしないまま、エンドロールの終わりを迎えました。

ぼくの映画に乗り切れなかった理由は、パラレルワールドに「ハッキリした結び」を求めていたぼくが、その結びの答えを受け止めることができなかったから、なのだと思います。

もっとも、そんな「?」を余白として残したのは、もちろん脚本、演出の狙ったところでしょう。

なので、あくまでぼく個人の正直感想でした。



『イエスタディ』評価

『イエスタディ』ぼくの評価は星三つ半⭐️⭐️⭐️✨です。

主人公ジャックの、音楽での成功への心のせめぎ合いドラマ、ステキでした。エリーとの関係も切なくて好きでした。

感想にも書きましたがいくつもの「アレはどうなったんだ?」という腑に落ちないあれこれが残念でした。

ラブシーンも切ないモードでありますけど、つれあいと、恋人と、家族で見ても楽しめる映画だと思います。


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